ヴィヴァルディ作曲 オペラ
『モンテズマ』
全3幕
台本:ルイージ・ジュスティ
Antonio Lucio VIVALDI(1678 -1741)"Montezuma" RV723
Libretto da Luigi Giusti
Sinfonia | Allegro - Andante molto - Allegro |
第1幕 | |
第1場 | |
(メキシコのとある湖の畔。その湖によって、王国の宮城とスペイン軍の宿営地が隔てられている。 両岸には大きな橋が架かっており、あたりには戦いの硝煙がまだ立ち込めている) |
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Recitativo accompagnato |
モンテズマ |
(剣を手に)戦いに敗れようとは、おお、神よ! 一日にして、余の威光と勇敢なるメキシコの栄光が崩れ去ってしまった。いにしえよりの祈祷も効験なく、 まるで天は我らを見放したかのように、余の苦しみと余の民たちの嘆きに無関心でおられる。 妻よ、娘よ、我が矜持よ、廷臣たち、そして友よ、いっそ私の胸に剣を突き立ててくれ。 けれども虚しくただ一人、屍の山の中で、果てしのない悲しみの渦中で、あてなき救いを探し求めるしかない。 |
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Recitativo | ミトレーナ |
あなた、何をしていらっしゃるの?ご自身を見失ってしまって、どうして人々の共感を得られましょう? 最たる逆境にあってこそ、心は奮い立つもの。 メキシコはスペインの勝利を前に屈してしまうかも知れない、それどころか、他の部族や、全世界にも。 けれども、苦難にあってこそ、私たちの名誉、あなたの強き心は最後まで戦い続けようとするのです。 |
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モンテズマ | |
見よ、海が血に染まり、陰鬱に波打っている。炎、残骸、そしてスペインの侵略者たちによって悲惨な目に遭った。 今は僅かばかりの領邦が余の足許に残されてあるのを見るだけだ。 おお、神よ、余に道を示したまえ。 気の毒な妻よ、教えてくれ、私たちの娘はどうしたのか? ああ、もし運命の神がまだ娘の自由を奪っていないなら、不埒な輩どもが勝利し、彼女を辱める前に、 あるいは凶暴な復讐の餌食となる前に、彼女を死なせてほしい。 |
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ミトレーナ | |
いけません、あなた、そんな悲観的になっては。気持ちをしっかり持ち続けていれば、いつか再起できるはず。 英雄でさえ運命の気まぐれには翻弄されるもの。行く末など誰が知ることが出来ましょう! |
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モンテズマ | |
余を納得させることの出来る希望などないのだ。 | |
ミトレーナ | |
私たちには民がついており、部隊もあります。私もまた武器を手に、勇気を以て戦いの試練へと加わりましょう。 なのに、あなたはうろたえるのですか?あなたの勇気はどこへいってしまわれたのでしょう? |
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第2場 | |
(テウティーレが駆け込んでくる) | |
Recitativo | テウティーレ |
お父様、お隠れになってください。彼らがあたりをかぎまわり、お父様を探しているのです。 お父様、つまりモンテズマが生きているとなれば、スペインの勝利も危うくなるからでしょう。 |
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モンテズマ | |
余を探している? | |
ミトレーナ | |
傲慢なスペイン人ども。力に任せて王をねじ伏せようというのね、この私の眼の前で。 さあ、出来るものなら来るがいいわ! |
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モンテズマ | |
余の右腕はまだそなたの助けを必要としてはおらぬ。暴虐の者はすぐにでも眼にするであろう、余の力と勇気を。 妻よ、そなたがその名にふさわしき者ならば、それを余に示すのだ。 (彼女の短剣を手にする) これを、そなたの偉大な勇気を証すものとして持っておくが良い。 暴虐者がそなたを奴隷として牢に繋ぐ前に、娘と、そしてそなたの胸にこれを突き立てよ。 |
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Aria | モンテズマ |
運命の脅威にも、高貴なる魂は負けはしない。 | |
残酷なる運命の女神も死に瀕しよう。 | |
苦境にあっては恐怖もあろうが、 | |
そなたの不屈の心がそれを打ち消してくれる。 | |
第3場 | |
Recitativo | ミトレーナ |
ああ、その崇高なるご命令。おお、我が義務よ!従いましょう…、妻であり母であるこの私は。 偉大なる神様、私はどうすれば?このような試練を前に、この勇気がたじろぐのを感じます。 |
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テウティーレ | |
お母様、もう時間がありませんわ。早く私を殺してください、その一撃で。名誉にふさわしきおこないです。 メキシコは屈辱にまみれ、その恨みも晴らせぬまま敗れてしまった。 お父様はないがしろに扱われ、兵も鎮圧されました。 あの卑怯者は、今やこの王国の支配者となって、私たちの希望を粉々に砕いてしまったのですから。 |
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ミトレーナ | |
いいえ、それは本心ではないはず。 ラミーロがあなたを愛する前、彼は自らの兄の第一の部下だった。 彼は兄の命令に従わねばならず、その義務こそ、兄との間では絶対だった。 ちっぽけな愛情など、すぐに消えてしまうもの。 娘よ、偉大なる者は、そうたやすく人生の移ろいや情熱の気まぐれに振り回されたりしてはならぬのです。 |
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テウティーレ | |
ああ、胸が締め付けられるようよ!何て辛い思いなの! | |
ミトレーナ | |
揺るがぬ心あってこそ、道理が勝利するのです。同じ心の者は、同じ心の者しか愛せないのよ。 高貴な心を共にするのであれば、相手もまた同じ心になるはず。 さあ、最期の時がやって来ました。いかに勇気を以て死に臨んでいくか、しっかりと見つめなさい。 残虐な侵略者があなたの涙と嘆きを眼にするよりも先に、あなたがあの者たちの戦利品となってしまう前に、 さあ、悲しむことなくお父様のご命令に従うのです。 そうです、この剣を以て、自らの人生を決するのです。 (モンテズマから与えられた剣を彼女に手渡す) |
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Aria | ミトレーナ |
悲しみと恐怖の果てなき波打ち際で、 | |
影となってあなたの後にまいりましょう。 | |
そうです、私もあなたに続くのです。 | |
いかに耐え忍べば良いのか、 | |
娘よ、何も言わなくとも私のこの悲しみを眼にすれば、 | |
心に抱くあなたへの愛を、どれほどあなたを愛してきたか、 | |
あなたは分かることでしょう。 | |
第4場 | |
Recitativo accompagnato |
テウティーレ |
この掟は何故に?人生の真っ盛りだというのに、喜びを離れて、悲嘆と苦しみの深みに沈んでいく。 死ぬほどの痛み、けれどももう愛を失ってしまったのなら、生きていても仕方がないわ。 (そこへ橋を降りてくるスペイン人に伴われ、フェルナンドが到着する) |
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Recitativo | フェルナンド |
やめろ、テウティーレ!我が不安を払拭するためにお前の力を借りたい。 私は、客人そして全権を委任された特使としてこれまで辛抱し続けてきた。 だがひとたび和平がないがしろにされ、我が民が攻撃されるのを見るに及んでは、その民を護るのが当然の権利と心得るものだ。 既に多くの者が我が統治下に置かれ、我が軍勢はメキシコを打ち破り、その運命は私の手中にある。 だが、征服された者どもの中の最強なる輩、未だ見えぬその者が、私に恐怖を与えるのだ。 お前の父親は未だに野蛮な敵意と強情さを捨てていないに違いない。そいつが未だ隠れているということが、私には最大の気がかりなのだ。 もう分かっただろう、だから、私はお前を人質にとる。 |
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テウティーレ | |
何ですって?ああ、この裏切者が! | |
モンテズマ | |
(橋の上で)〔独白:おお、何と臆病者なのだ、娘は〕 | |
ミトレーナ | |
王女たる者がフェルナンドの人質にですって?何と恥知らずな。 あなたは神様同前の先祖の輝かしい血を穢すつもりなの? ああ、神様、歴代の王たちがあなた様の意に叶っており、その思し召しを頂いていたならば、この娘に罰をお与えください。 それが私ども全ての望み。 |
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モンテズマ | |
〔独白:神々は神々で仇を返すだろう〕(橋上のモンテズマが矢を弓にかける) | |
フェルナンド | |
何を怒っている? | |
テウティーレ | |
(モンテズマの姿を認めて)ああ、神様!じっとしていましょう、この冷血漢…… | |
モンテズマ | |
〔独白:復讐の神がこの一撃を望んでいよう〕 (彼が矢を放ち、それがフェルナンドを傷つける) |
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フェルナンド | |
やられた…… | |
第5場 | |
Recitativo | ラミーロ |
兄上! | |
フェルナンド | |
この凶行は…… | |
モンテズマ | |
ならず者は死んだ、余は水の中に身を隠そう。(湖へ身を投げる) | |
フェルナンド | |
矢は何処から飛んできた? | |
ラミーロ | |
わかりません。 | |
フェルナンド | |
犯人はじき探し出されよう。ラミーロ、捜査はお前に任せる。復讐に手加減は無用だ。 正義こそが、私の決定を支配している。 そして運命の星はよく分かっているのだ、私の真実と、その良きおこないを。 |
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Aria | フェルナンド |
胸に逆巻くこの怒りで、 | |
矢を放った者を必ず罰してやろう。 | |
時に犯罪者は邪悪な行いで卑しき利を得るが、 | |
やがては身から出た錆に深く苦しむ。 | |
第6場 | |
Recitativo | ラミーロ |
僕には君をまっすぐに見る勇気がない、愛する人よ、君に何が起きているんだ? | |
テウティーレ | |
ひどい人ね、まだ私を騙そうとするつもり?もうあなたの嘘お見通しなの。 | |
ラミーロ | |
お願いだ、どうか話を聞いてくれ。 | |
テウティーレ | |
お断りだわ、あなたは私たちを傷つけたのよ。もうあなたの愛とは関わらないで生きていくわ。 この私のために軍勢は武器を置き、私はあなたに王国の秘密も打ち明けた。 お父様も、お母様も、そしてこの国、そうよ誰もが、悪辣なあなたの言葉を当てにしてしまった。 その結果、私たちに何も行動を起こさせないまま、あなたは名誉を手に入れたというわけね。 あなた草原の中に身を隠す一匹の蛇のようなものよ。 |
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ラミーロ | |
よく分かっているとも… | |
テウティーレ | |
あなたがしていることはよく分かっているわ!けれど、どうしようもない過去のことを言っても仕方がない。 既に、あなたは自らの行いと勝利とで名声を得ているのだもの。 |
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ラミーロ | |
それじゃあ、僕にどうしてほしいと? | |
テウティーレ | |
私はこの王国に平和を取り戻したいの、あなた方の武器から吹き出す火が消され、 あなた方が陣地を捨ててゆくところが見たい。 |
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ラミーロ | |
多くを望むんだね、君の愛は、僕の勝利と名誉を逆なでにすることを願うというわけか。 | |
テウティーレ | |
それじゃあ、あなたの望み通りに私もあなたの敵に相応しい者になるだけよ。 | |
Aria | テウティーレ |
ひどい人だわ!私の心は引き裂かれるの、 | |
あなたへの愛と痛みに。 | |
この心はあなたを嫌う、あなたを愛するほどに。 | |
あなたは不実の人、裏切者、 | |
あなたは知っているのに、私の誠と、愛への献身を。 | |
第7場 | |
Recitativo | ラミーロ |
本当に不運な一日だ!幾つもの災いが僕に舞い降りる。兄上の高邁な意志は、僕の心を恐怖でいっぱいにする。 課された使命が、この心をずたずたにするんだ。最愛の人を犠牲にしなければならないなんて。 |
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Aria | ラミーロ |
沈黙の淵にこの身を沈めてしまおう、愛が義務に引き裂かれるなんて。 | |
僕の胸は苦しみと悲しみの恰好の標的。 | |
兄上は僕を叱りつける、僕の心の中の、 | |
愛と痛みこそが非道であると。 | |
第8場 | |
(中央に扉のある部屋で) | |
Recitativo | モンテズマ |
(スペイン人の身なりをしている) | |
神々よ、もし再びそのご慈悲をこの惨めな王に向けて下さるなら、どうか援け給え、余の思いとともに、余の軍勢を導き給え。 いま身に着けているのは、敵から奪い取った戦利品、スペイン人の統治に対する勝利のしるしだ。 これで変装すれば、余の大いなる目的を成し遂げる助けにもなろう。 まずは、我が罪深き娘だ。この愚かな子に罰を与えてやらねばならぬ。 何故なら、奴隷としての屈辱よりも、死の恐怖に怯えているのだから。娘こそ、余の復讐の手始めとなる。 |
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(再び身を隠す) | |
第9場 | |
Recitativo | テウティーレ |
(慌てて)付いてきて頂戴。 | |
ラミーロ | |
何を探しているんだい? | |
テウティーレ | |
急いで休戦を呼びかけるのよ。ああ、あなたには見えない?きっと何処かに隠れているわ。 どこかこのあたりに。神様!なんていう苦しみなのかしら! |
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ラミーロ | |
何を言っているんだ?……いったい何処へ? | |
テウティーレ | |
(不安そうに)たぶん私がいけなかった。でもいいえ、私は間違ったことはしていないわ。 ラミーロ、あなたは私のお父様の姿を見てはいない? |
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ラミーロ | |
君は父上が湖に飛び込んだのを知らないのかい? 父上に残された唯一の道は、自らの敗北を終わらせるために投身することだったんだよ。 |
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テウティーレ | |
お父様が亡くなったですって? | |
モンテズマ | |
(突然姿を現す)いいや、余はまだ生きておるぞ! | |
テウティーレ | |
私には分かっておりました。ああ、お父様のためにどれだけ涙を流したことでしょう。 遥か遠くから、お父様が大勢の武装した者たちとやって来られるのを見ておりましたから。 すぐにもお父様のもとへ駆け寄って、恭しくその御手にとおみ足に口づけをしたかったのです。 |
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モンテズマ | |
立つのだ、臆病者め。余がお前に望んだのはそんなことであったか? その身が奴隷となり果て、不名誉を晒そうとも、お前はいいのか? |
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テウティーレ | |
私は何もされておりません。 | |
モンテズマ | |
死ぬのだ。その身など問題ではない。 | |
(彼が剣に手をかけ、テウティーレを殺そうとするも、ラミーロに止められる) | |
ラミーロ | |
おやめ下さい! | |
テウティーレ | |
血が凍りついたわ。 | |
モンテズマ | |
余計なことをするな、邪魔者め! | |
ラミーロ | |
(モンテズマの剣を抑えて)どうかご慈悲を… | |
モンテズマ | |
卑怯者め、手を離せ! | |
ラミーロ | |
(フェルナンドがやって来るのを眼にして)フェルナンドだ。 | |
テウティーレ | |
フェルナンドですって?何てことなの、どうしていまここに? | |
モンテズマ | |
来るがいい、望むところだ。 | |
ラミーロ | |
王様、お隠れ下さい。〔独白:とんでもないことになるぞ!〕 (モンテズマを扉の向こうに押しやる) |
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テウティーレ | |
お父様、隠れて。 | |
モンテズマ | |
何と理不尽なことだ。(彼らがモンテズマを隠す) | |
第10場 | |
Recitativo | フェルナンド |
(あたりを見回して)ラミーロ、色恋ごっこにかまけている時か? | |
ラミーロ | |
どういうことでしょう?よくわかりませんが… | |
フェルナンド | |
何をとぼけている?何を狼狽しているのだ?私のことも真っ直ぐに見ることが出来ないようだな! | |
モンテズマ | |
〔独白:怒りが込み上げてくる!〕 | |
テウティーレ | |
〔独白:ひどいわ!〕 | |
ラミーロ | |
〔ああ、神よ、苦しみの極みだ〕 | |
フェルナンド | |
来い!我らの宿営地の全ての入り口を守備せねばならない。 百の船隊が海を渡りくるのが見えた。奴らの先頭が何処か、どのあたりに上陸するかを見極めねばならぬ。 見てきて何がどうなっているか、私に報告しろ。 |
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ラミーロ | |
〔独白:ああ、ひどい運命だ!〕 | |
フェルナンド | |
何故行かぬ? | |
ラミーロ | |
いま行こうと… | |
フェルナンド | |
のろまな奴め… | |
ラミーロ | |
〔独白:いったいどうなるのだ!〕 | |
フェルナンド | |
直ちに命令に従え、わかったな。 | |
ラミーロ | |
〔独白:苦悩の極みだ、おお、神よ〕 | |
第11場 | |
Recitativo | フェルナンド |
それにしても、やけにしんとしているな? 王女よ、私は気づいているぞ、そなたが私に疑いを起こさせるような恐れを抱いていることをな。 ラミーロは何か良からぬことをしているだろう? |
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テウティーレ | |
全くの誤解ですわ。あの方の高潔なお心は少しも減じたりしておりません。 敵ではありますが、ご自身の義務をよくわきまえていらっしゃいます。 あの人は真からあなたのご意思の執行者。ただ、私の王族としての血に敬意を払って下さっているのです。 |
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第12場 | |
Recitativo | ラミーロ |
(急ぎ戻ってきて)兄上、岸辺に着いた武装船団から、穏やかな様子のミトレーナがこちらにやってまいります。 | |
モンテズマ | |
〔独白:ミトレーナだと!〕 | |
フェルナンド | |
彼女は何と? | |
ラミーロ | |
この場所に安全に出入り出来ることを保障してほしいと。兄上にも同様のことを約束すると言っています。 | |
フェルナンド | |
彼女をここへ。丁重に迎えよう。 | |
ラミーロ | |
(静かにその場を去ろうとするモンテズマに向かい) そっと身を隠すんだ。 |
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テウティーレ | |
〔独白:少しはほっとしたわ〕 | |
ラミーロ | |
〔独白:運命の女神がこちらを向いてくれたかも知れないぞ〕 | |
モンテズマ | |
〔神よ!心が煮えくり返ります!〕 | |
フェルナンド | |
王女よ、私から離れ、しばしの間一人でいるように。 | |
テウティーレ | |
大事なお話を邪魔立てしたりはしませんわ。 | |
フェルナンド | |
私の用心のためではない、ミトレーナのためだ。彼女を怒らせるようなことがあってはいけない。行け。 | |
テウティーレ | |
〔独白:私はどうしたら?〕 | |
フェルナンド | |
行くのだ!私の希望はつまり命令だ。 | |
テウティーレ | |
おかしなことになってきたわ! | |
第13場 | |
Recitativo | フェルナンド |
(兵士たちに)兵士たちよ、行って、高貴なるそのご婦人を最高の贅を以て遇するように。 | |
モンテズマ | |
〔独白:ただの誤魔化しだ〕 | |
ミトレーナ | |
(アスプラーノとともに到着する) これは何のつもりでしょう、おやめください! ここは私の国であり、荘厳を命じるのはこの私です。こうしたことを受け入れるわけにはいきません。 |
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モンテズマ | |
〔独白:まさにその通りだ!〕 | |
フェルナンド | |
私は既にこの地の統治者ですが、丁重なるおもてなしのためには、自らの優位な立場を忘れねばなりません。 それが勝者というものです。 |
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アスプラーノ | |
〔独白:何という無礼者!〕 | |
モンテズマ | |
〔独白:もう我慢ならぬ!〕 | |
ミトレーナ | |
あなたの威光を増すことになるであろう、この非公式の話し合いの場に、見てのとおり私は一人でやって来たのではありません。 あなたの優位はまだ確実ではありません。 投げる石が残されている限り、少しでも戦士がいる限り、いいですね、あなたの勝利は保障されていないのです。 |
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フェルナンド | |
私が敵に対してこの剣を使うことが出来るうちは、その僅かばかりの戦士たちも万事休すだろう。 | |
第14場 | |
(剣を手にしたモンテズマが隠れていた場所から姿を現す) | |
Recitativo | モンテズマ |
(フェルナンドに向かい剣を振り上げながら)ならずものめ!最初に死ぬのはお前のほうだ。 | |
ラミーロ | |
(剣をひったくる)やめるんだ! | |
モンテズマ | |
おお、何をする!(武器を奪われ再び身を隠す) | |
フェルナンド | |
(騒ぎを聞きつけて振り返ると、剣を手にしたラミーロを見つける) | |
ミトレーナ | |
〔独白:モンテズマが?どういうことなの?〕 | |
アスプラーノ | |
〔独白:なんて姿をしているんだ!〕 | |
フェルナンド | |
これは何だ? | |
ラミーロ | |
〔独白:見つかってしまった!〕 | |
フェルナンド | |
裏切者め!剣を手にしているな?それで何をするつもりだった? そう、わかっているとも。剣を寄こせ! |
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ラミーロ | |
ここに。 | |
フェルナンド | |
大いなる犯罪をとくと見よ。私の疑いは更に深まった。 衛兵よ!倍の人数でもって全ての出口を見張るのだ。私の許可なくして誰もここを離れてはならぬ。 |
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ミトレーナ | |
〔独白:恐ろしい命令だわ〕 | |
ラミーロ | |
少しだけ話を聞いてください… | |
フェルナンド | |
いや、私にすればこれで十分だ。いかなる罪が、お前の高貴な血すじを傷つけることか? そして誰が、お前をそのような行いに追いやろうとしたのか? |
|
(モンテズマが急に姿を現す) | |
モンテズマ | |
咎められるべきはこの私だ。 | |
ミトレーナ | |
〔独白:ああ!〕 | |
アスプラーノ | |
〔独白:おお、神よ、これはいったい?〕 | |
モンテズマ | |
(フェルナンドに) 軽率にもお前のことを信用しようという無防備の女だ、傷つけるが良かろう。 (ミトレーナに) お前の首を垂れるが良い、偉大なる女帝の位を求める者として、この世の最も高慢なる支配者の前にな。 |
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フェルナンド | |
私に媚びる必要はない、王よ。 そなたの神が勇気を取り戻してくれようがどうしようが、そなたは私に対して帰順を表することになるだろう。 |
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モンテズマ | |
悪党め!何が言いたい? | |
フェルナンド | |
お前は私の中に、この栄誉を遮るような少しのくもりも見出すことは出来ぬ。 私はこれまで、正々堂々戦い続けてきたし、誤魔化しや策略で勝利を得ようとしたこともない。 つまり、我々の栄誉には一点の汚れもないのだ。 |
|
ミトレーナ | |
ならこの軍勢は… | |
フェルナンド | |
神と、神の国を護るためだ。 そしてまた、メキシコの王がさもしい考えを起こし、罪を犯そうとするなら、その王と王国を罰してやるためだ。 |
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ミトレーナ | |
〔独白:ああ、神様!〕 | |
モンテズマ | |
罪とはどういう意味だ?… | |
フェルナンド | |
お前の罪は、モンテズマよ、明白だ。 いまここで、お前が自分の身姿をそのように欺こうとしていることが、何よりの証拠だ。 その姿が全ての良識と法に違背しているのだ。 |
|
アスプラーノ | |
〔独白:恐怖のあまり凍りついてしまいそうだ!〕 | |
ミトレーナ | |
〔独白:あの男の怒りは尋常じゃないわ〕 | |
モンテズマ | |
横暴にも程があるぞ… | |
フェルナンド | |
兵たちよ、王の手を鎖で縛り上げろ。 | |
モンテズマ | |
ならず者めが… | |
ミトレーナ | |
ひどいわ、何をする気? | |
フェルナンド | |
なすべきことをしたまでだ。 | |
ラミーロ | |
兄上、これではあまりにも… | |
フェルナンド | |
言うな!公然となされた罪は、公然の場で罰せられなければならぬ。兵よ!私の命令に従え。 (兵士たちがモンテズマに鎖をかける) |
|
ミトレーナ | |
だめです!…やめて…やめて頂戴!神様!ひどい辱めです! 偉大なる貴族であるはずよ、あなた、フェルナンド。なのにつまらぬ平民のような真似をするの? 天の神様、このような神聖冒涜をお許しになるのですか? (スペイン人たちに向かって)兵士たちよ、あなた方は何の惧れもなく、こんな野蛮な指導者に仕え、従うことが出来るのですか? …可哀そうなあの人…このミトレーナは何も出来ない。…ああ、この苦しみ、…この恥辱…終わりなき失墜、これが正義なのでしょうか? 恩知らずのスペイン人め、この虐げられた国を植民地にするための、これがヨーロッパのやり方ね? あなた方に抵抗して、傷ついた者たちへの仕打ちなのね?傑出した英雄とやらが。 |
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フェルナンド | |
十分だ!時が来れば私の行いの正しさが分かるだろう。私の良心は後悔に揺らぐことはない。 私同様、そなたにも分かっているはずだ、これまでの戦いの中で見せてきたように、私は騎士としてふさわしき振る舞いをこそ尊ぶのだ。 |
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Aria | フェルナンド |
統治者の命令をこそ、尊ぶことを学ばねばならぬ。 | |
尊大ぶったその手を下ろし、傲慢なその頭を卑しくするのだ。 | |
王といえども刑罰は下される、 | |
お前の共犯者たちもまた、同じに扱ってやろう。 | |
(退場し、ラミーロが後を追う) | |
第15場 | |
Recitativo | モンテズマ |
事実だと認めよう、いま、余のいる場所がわからぬと。 余の語りかける者たちも同様だ! 最期の時まで、運命の女神は余を王国の衆目に晒し続ける。それが深い苦しみであり、屈辱なのだ。 |
|
Recitativo accompagnato |
モンテズマ |
だが、この勇気と力は衰えることはない。自由の身である妻が、余の復讐に力を注ぐだろう。 あの暴虐者は余の国の法に敬意を払わぬ。だからこそ見ているがよい、あの愚か者が余とともに奈落へと引きずり込まれるのを。 |
|
Aria | モンテズマ |
余に死が運命付られていようとも、愛する妻よ、決して恐れてはならぬ。 | |
余の魂はお前の傍らに留まり、いつでも一緒にいるのだから。 | |
戦にあっても、憩の時にも、不屈の亡霊となって、 | |
暴虐者どもに災いをもたらしてやるのだ。 | |
第16場 | |
Recitativo accompagnato |
ミトレーナ |
我が夫が去ってゆく、悲しみに打ちひしがれ、辱めと忍従の重みに堪えながら。 神様、メキシコに苦難を与えるのではなく、この圧制者から、その暴力から、我らの民と、その家族を、 そして私たちの文明をお守り下さい。憐れんで下さい。 そしてお誓いいたしましょう、もしご慈悲を賜る事が出来たならば、千の清らかなる供犠を祭壇にお捧しますと。 |
|
Aria | ミトレーナ |
剣を奪え、奴らが我らにかざす剣を。 | |
死神が待とうと、大地に倒れようと、 | |
我らの運命は満たされている、栄光と名誉に。 | |
愛する夫よ、あなたの苦しみは私に重くのしかかり、 | |
その悲しみは私に痛ましい恐怖を呼び起こすけれど。 | |
第17場 | |
Recitativo | アスプラーノ |
私はまだ気持ちを失ってはいない。 例え王の軍勢が打ち破られようとも、諦めることなく数多の味方に呼びかけるのだ。 そうともさ、あのごろつきどもが、もう一度その高慢な額に汗をかきたいというのならな。 百の丸木舟と、同じ数のカヌーが私の命令を待っている。 その上、有難いことにミトレーナ様、我らの神は、来たるべきその戦いにおいて、あなたや私の同胞の運命のために、 力強い働きをなしてくださるだろう。 |
|
Aria | アスプラーノ |
ものみなうつろう憂いの中にも、 | |
愛と真実への我が思いは募り深まる。 | |
唇よりこぼれ落ちる嘆きより悲しみより、 | |
この心の痛みこそが確たる勇気の証し。 | |
第2幕 | |
第1場 | |
(スペイン人の宿営地。会堂の中に二つの椅子がある) | |
Recitativo | テウティーレ |
いくら話し合っても無駄だわ、アスプラーノ、傍若無人なフェルナンドがどれだけのことをしてきたかわからないの? あんなやり方、とても統治者と言えるものではないのよ。 |
|
アスプラーノ | |
辛抱なさるのです、テウティーレ様。奴らの幸運などいつまでも持ちません。 あらゆる手立てを使って、あの野蛮人どもに分からせてやりましょう、火の海に沈むべき、敗北の運命を。 |
|
テウティーレ | |
でもラミーロはどうなるのかしら?… | |
アスプラーノ | |
お許し下さい、あなた様はもっと他のことをお考えになるべきです。 あなた様の不幸を悲しむメキシコの民が、あなた様にお目にかかりたいと望んでいるのですから。 そのお優しいお姿は、きっと皆を勇気づけて下さいましょう。さあ…… |
|
テウティーレ | |
従いますわ。でも、お父様はどうされたのでしょう? | |
アスプラーノ | |
ご心配はごもっともです。 が既にカヌーと丸木舟が、そして陣地に集められた戦士たちが、 あの狡猾な男の、堕落と殺戮の巣窟に火を付けてやるのを手ぐすねひいて待っているんですよ。 |
|
Aria | アスプラーノ |
我らの星は輝きを増す。 | |
より明るく、更に憐れみ深く我らを照らす。 | |
今は血みどろの痛みの中、あたりを暗黒で包んでいるけれど。 | |
時に天は怒りにわななき、恐怖のいかづちを轟かせ稲妻を見せる。 | |
しかしやがて穏やかさを取り戻すのだ。 | |
悲しみには慰めを、貧しさに悩む農夫には希望を運ぶように。 | |
第2場 | |
Recitativo | テウティーレ |
(登場しながら) 少しは気持ちが楽になるわ。アスプラーノのちょっとした言葉のおかげで、新たな希望が見えてきたような気がする。 |
|
フェルナンド | |
(登場しながら) メキシコ人があの男以上の指揮官を持てぬなら、これからも連中はせいぜいのところ脆弱な護りしか築くことは出来まい。 |
|
テウティーレ | |
何故あなた方はお父様を自由にしてくださらないの?お父様が囚われの身になることに何の謂れがあるというの? 他に卓越する戦士としての徳の持ち主ならば、どうしてこんな野蛮な行為で、他の者の英雄的な行いを否定出来るというのでしょう? |
|
フェルナンド | |
うんざりだ。お前のかんしゃくなんぞ、お前の忠告と同じくらい役に立たぬ。 お前の話を聞くつもりはない。自分の天幕へ戻るんだ。誰かに送らせよう。 |
|
テウティーレ | |
いつ?私はあなたの手の中にいるのよ… | |
フェルナンド | |
お前の言った通りにしてやる。衛兵よ、ラミーロを呼べ。 | |
テウティーレ | |
確かに言ったわ… | |
フェルナンド | |
もう喋るな!行け。他にも考えねばならぬ事がある。 | |
第3場 | |
Recitativo | フェルナンド |
私の使命は他の何にも増して困難を伴う。その元は我が弟だ。彼が来たな。 | |
ラミーロ | |
ご命令に従い参りました。 私が落胆している姿をご覧になっても、ご心配なさらないでください。これには理由があるのです。 |
|
フェルナンド | |
何を気に病んでいる? | |
ラミーロ | |
私たちの言動が、少し横暴に過ぎると思われることです。 兄上の義憤を否定はしません。 けれども、最早や無防備となったアステカの王を、余りに不当かつ侮蔑的に扱い過ぎるように思えるのです。 |
|
フェルナンド | |
犯罪者を処罰し、我らの行いを未開の者どもに対する教化の手本とすることが、法外なことだと言いたいのか? あの人殺しの王は、今日、私を二度も殺そうとした。 お前もまた、自らの沈黙によってその横暴な狂乱行為の共犯者と同じなのだ。 |
|
ラミーロ | |
その理由は… | |
フェルナンド | |
分かっている。残念な事だが、愛がお前を腑抜けにさせていることは。 おや、ミトレーナがやって来たぞ。遠方よりのお越しだ。お前は席を外せ。 |
|
ラミーロ | |
まず説明させて下さい… | |
フェルナンド | |
その必要はない。お前の顔の赤らんだのが、その罪の何よりの証拠だ。 | |
ラミーロ | |
〔独白:何てひどいことを言うんだ!〕 | |
Aria | ラミーロ |
私の顔が赤かったのは、あなたへの尊敬を保っている証し。 | |
私のため息も、不安のしるしなんかじゃない。 | |
私だって、兄上、あなたの名誉を重んじている。 | |
けれど、もう少し優しくなってほしいのだ。 | |
そうすれば、世界はあなたの愛と勇気を讃えるのに。 | |
第4場 | |
Recitativo | ミトレーナ |
フェルナンド、私たちにとり、とても重要な時が来ました。 私の言葉に、もう一度耳を傾けてほしいのです、あなたが私に教えてくれた、その寛大さを以て。 あなたの心の中では、運命と使命とが戦いあっている。けれども、よくお考え頂きたいのです。 あなたはフェルナンドであり、私はミトレーナであることを。(座る) |
|
フェルナンド | |
そなたの言葉に従う名誉を授けてくれるとは喜ばしいことだ! ご承知の通り、私はこれまで公明正大なることを侵したことはない。話を続けるが良かろう。 ただ、そなたはミトレーナであり、私はフェルナンドであることをわきまえておけ。 |
|
ミトレーナ | |
かつて、この広大な土地は、世界から隔てられ、知られることなく、暗黒と無知の中に投げ出されていました。 人々の心は因習に深く閉ざされ、文明の進歩とその規範から取り残されていたのです。 けれどもある日、この暗闇のうちに天の采配ともいうべき光が差しました。 天の造物主が神秘を現し、偉大なる英雄が、その選びし者たちと共に、未だ知られざる海を渡りくることで、それはもたらされたのです。 |
|
フェルナンド | |
つまり社交辞令か… | |
ミトレーナ | |
あなたの功績を話しているのです。そう言わずにお聞き下さい。 あなたは、ついにコスメルの海岸に着いた。 初めてこの地に上陸した時の、この地の民の無知に心を痛めたあなたの姿を、思い出させるものはもうありません。 それらの日々を思う時、この私も悲しみに心が塞ぐのです。苦しみの余り、思い起こすことも出来ないほどです。 |
|
フェルナンド | |
王妃よ、不当にも私をなじるつもりか… | |
ミトレーナ | |
残酷なるお方よ、黙って自らの非行の数々を聞きなさい。 あなたが、客人であり、また特使としての威厳を身にまとっていた時には、 その狡猾さと悪魔の如き企みを私たちに隠し通していました。 二心のあるあなたの手に、未だ血の通った温かみがあった時には、特別の礼儀を以て接して来たのです。 私たちはあなたの命令を受け入れました。 あなたは、正直者を装ったその見せかけのもとで、少しづつ私たちを信じ込ませようとしたのです。 ついに、私たちは和平の約束をなし、あなた方の教えを顕揚し、自分たちの神への崇拝を止めようとしました。 けれどその時、私は目の当たりにしたのです。 あらゆる法が蹂躙され、数多の不当なる扱いが私たちに対してなされ、町中が反旗ののろしを上げるのを。 |
|
フェルナンド | |
あなたは誤解しているようだ、そんな過激なことなど… | |
ミトレーナ | |
もう殆ど言い尽くしましたが、もう少し、黙って話を聞いてほしいのです。 我が夫は死を目の当たりにして己の使命に目覚め、範を示して、王国を守るために臣下たちを呼び集めました。 けれども残念なことに、神々の采配は逆に来て、陣地は破壊され、そしてあなたは勝者となったのです。 この運命的な成り行きを見て、あなたはもう何も恐れる必要はないと考え、慈悲や徳の片鱗さえ捨て去りました。 そして、全てが破壊されつくしたのです。 逃れ去るうちに勇気も砕け、幾つもの恐ろしい光景を目にして、涙に暮れ、苦しみと悲しみに打ちのめされた我が夫と娘は、 今や手枷をはめられ呻吟しています。 (彼女が立ち上がる) けれども、もしあなたにまだ少しでも気持ちがあるならば、局面を打開する余地はあります。 我が夫と娘を自由の身にし、部隊とともにあなたはこの土地をお去り下さい。 でももしそうではなく、権力欲に駆られ、不法かつ不誠実な己の考えにこだわるならば、 今日を限りに、あなたは死を賭けた戦いへと進むことになるでしょう。 |
|
フェルナンド | |
まずは許しを請うこととしよう。 だが、私についてのそなたの話は、余りに誇張され過ぎているようだ。 あなたがたが言うほど、私は暴君ではない。 冷静になって私の話を、とりわけその真実に耳を傾けてほしい。 |
|
(ミトレーナは自らの座に戻る) | |
この王国にやってきた私は、あなた方と戦い、そして勝利した。 だがその間、常に、私は寛容と善政とに心を向けてきた。そなたはそれを見てきたではないか。 そなたがくれた親密なる友情のしるしに従い、神聖かつ偉大なる誓約のもと、信頼と受容を果たしてきた。 王国とその犠牲者にも敬意を払ってきたつもりだ。 |
|
ミトレーナ | |
けれどそれからは?… | |
フェルナンド | |
そなたには何が不満なのか?私に忠実であった者に対する虐殺行為から、私が目を背けていると言いたいのか? その批判は当たらない。私は自身と部下たちを守るために戦ったまでで、そなた等に対する敵意から戦ったわけではない。 モンテズマはどうかしている。私はあの男が送ってきた間諜にさえ親しくしてやったのに。 聡明なそなたのことであれば、あの男の粗暴さに辟易しているだろうことは想像がつく。 私にとっては、あの男を捕えておくことが重要なのだ。 私はそなた達との和解に期待はしていない。それどころか何も求めぬ。 だがそなた達が戦いを恐れるのであれば、私は自身の名誉を更に高めることを拒みはしないと言っておこう。 |
|
第5場 | |
Recitativo | モンテズマ |
(兵士たちに囲まれ、鎖に繋がれながら) お前は戦うことになるだろう、剣を寄こせ。さすれば我らが敗れようとも、お前はこの世の英雄を眼にすることになろう。 |
|
ミトレーナ | |
(モンテズマに)ああ神様…どうか落ち着いて下さい! | |
モンテズマ | |
怒りの他に余を律するものはないのだ。 | |
フェルナンド | |
お前の武勇はよくわかった! | |
モンテズマ | |
甲冑を脱げ、臆病者め。たった一人ででも、余に立ち向かって来れるということを見せてみるが良い。 互角の立場で、どちらの剣が血に飢えているかを競ってみようではないか。 |
|
フェルナンド | |
(兵士たちに向かい)この無敵の英雄の鎖を解いてやれ。 (ミトレーナに対して)私があなた方を恐れているかどうか、じき分かるだろう。 この決闘が私のなすべき役割であるなら、この賭けは私の勝利で飾られ、そして我らはあの男の死を見ることになる。 |
|
(彼が出て行こうとするのをミトレーナが止める) | |
ミトレーナ | |
やめて…よして頂戴… | |
モンテズマ | |
(ミトレーナに向かい)恥を知れ! | |
ミトレーナ | |
(フェルナンドに向かって)聞いて頂戴… | |
フェルナンド | |
無駄だ… | |
ミトレーナ | |
そんな… | |
フェルナンド | |
もう十分だ!じきにお前たちはこの剣の瞬きに蒼ざめることになろう。 | |
ミトレーナ | |
ああ、堪えられない… | |
モンテズマ | |
行かせるのだ… | |
フェルナンド | |
決闘だ! | |
モンテズマ | |
望むところだ! | |
Terzetto | モンテズマとフェルナンド |
いざ戦いへ! | |
我が剣、怒り、そして名誉がお前を待っている。 | |
モンテズマ | |
余の復讐は遂げられよう、そうとも裏切者め、お前の血を以てして! | |
フェルナンド | |
この剣の一突きは、お前の罪にすれば小さすぎる罰。 | |
ミトレーナ | |
あまりに酷い、堪え難き災いよ、神様ああ!ご慈悲と思慮をお授け下さい! | |
ああ、我が夫よ!ああ神様!侯爵様!どうかご慈悲を! | |
フェルナンド | |
この男に哀れはかけぬ、値しないのだ。 | |
モンテズマ | |
(ミトレーナに) お前のなだめ言葉を聞くと更に怒りが燃え上がる。 | |
フェルナンド | |
何と粗野なプライドか! | |
モンテズマ | |
(ミトレーナに) 臆病風に吹かれた泣き言だな! | |
フェルナンド モンテズマ ミトレーナ | |
残忍なかんしゃく持ちめ! 残酷な運命よ! なんで惨めな日なのかしら! | |
モンテズマとフェルナンド | |
いざ戦いへ! | |
我が剣、怒り、そして名誉がお前を待っている。 | |
ミトレーナ | |
(モンテズマに) 私たちのことを、あなたの王国のことをよく考えて! | |
モンテズマ | |
(ミトレーナに) 余は余のことだけを、余の怒りのことだけを考えよう。 | |
フェルナンド | |
聞き分けのない者は、己の運命からの仕返しを被るだけだ。 | |
モンテズマ | |
(ミトレーナに) お前はこのならず者に協力したいのか、その泣き言で以て? | |
ミトレーナ | |
ああ、天の星よ!この者たちの怒りをお鎮め下さい! | |
フェルナンド | |
さあ、かかって来い、いざ闘いに! | |
モンテズマ | |
望むところだ、今こそ恨みをはらそう。 | |
フェルナンドとモンテズマ | |
そしてお前は言うことだろう… | |
三人で | |
おお、無慈悲な運命!おお、冷徹なる天よ! | |
第6場 | |
(宿営地に近い湾の岸辺の広場) | |
Recitativo | ラミーロ |
(スペイン軍の部隊ともに登場する) そう落ち込むな、友よ、じきに決着がつくさ。損失が大きい割には敵の士気も盛り返しているようだが、 今日こそ僕たちのほうに運が向いてきたようだ。名誉のための新しいチャンス到来だ。 |
|
アスプラーノ | |
無礼な奴め!お前たちの戦利品など、じきに無に帰すだろう。 我らの王は、勇気にも軍勢にも欠くことはないのだ。 やがてお前たちは、自分の冒した愚行と面汚しに後悔して、恐怖で蒼ざめるだろうさ。 |
|
第7場 | |
Recitativo | フェルナンド |
好きなように言わせておけ、もしあの男にその言葉通り勇気があるなら、決闘の場へと出てくれば良い。 (ラミーロに向かい)すぐに闘いの準備をしろ。耳をつんざくような軍楽隊の音の中で、最後の決着をつけてやる。 |
|
ラミーロ | |
はい、直ちに。 (ラミーロは部隊の一団とともに退場するが、兵士たちの一部はそのまま残る) |
|
フェルナンド | |
(アスプラーノに向かい) お前を痛めつけ殺してやることも出来たが、早々に英雄となってお前の王と王国に借りを作るというのも気が進まぬというものだ。 |
|
Aria | フェルナンド |
余りに、余りに思い上がっているぞ、自分が勇敢な戦士だなどと。 | |
その蒼ざめた顔つき、無様に震え慄く足取り、 | |
それらが何より語っていよう、臆病者のお前の嘘を。 | |
ならば見つめてみよ、この私の姿を! | |
偽りの徳、武勇よ、せいぜい虚勢を張るがいい、 | |
容赦なきこの私の怒りに出会うまで。 | |
第8場 | |
Recitativo | アスプラーノ |
この私をそこまで馬鹿にしようというのか。何て無礼な輩なんだ!私の勇気を知らぬとは、愚かな奴め! さあ、何を自制する必要があろう?反逆者が法を踏みにじるのを見るため? 我が身を侮辱の中に沈めたままにするためか? |
|
Aria | アスプラーノ |
炎の怒りを身にまとえ、 | |
王国の敵が大言壮語を振りまくのだから。 | |
忘恩の輩は理法を知らぬ、 | |
だからその野蛮な企ても思い遂げられぬのだ。 | |
第9場 | |
Recitativo | フェルナンド |
(モンテズマを追いながら) 待て!逃げるな。勇敢で負け知らずだというなら、なぜ身をかわしてばかりいる? | |
モンテズマ | |
何という言い草だ?余を臆病者呼ばわりする気か!武器ならここにある。 運命の女神が余に刃向おうとも、余の最高神と余の軍勢が余を見捨てることはせぬ。 |
|
フェルナンド | |
それにしても、お前のそ困惑した顔つき、蒼ざめようといったらどうだ。今ならまだ、私に情けを請う事も出来るぞ。 諦めてその武器を下ろし、王国を放棄し、別の人生を生きるのだ。 |
|
モンテズマ | |
ふざけるな。お前はわざと私の気勢を削ごうとしているんだな? | |
フェルナンド | |
ならば死を覚悟しろ。 | |
モンテズマ | |
闘うまでだ。 | |
フェルナンド | |
仕方あるまい。 (二人して闘う) | |
モンテズマ | |
まだくたばらないか? | |
フェルナンド | |
まだやる気か、野蛮人め? (戦いながら背後に退く) 降参しろ。 |
|
モンテズマ | |
生意気な奴! | |
フェルナンド | |
死ね、悪党。 | |
モンテズマ | |
まずい……兵たちよ、加勢しろ! | |
Sinfonia | (Per il combattimento) 戦いのシンフォニーア |
(両軍、戦いながら退場する。 メキシコの軍勢がフェルナンドを圧倒する一方、スペイン軍は波状的に攻撃を仕掛ける。 やがて戦いは終わり、兵士たちはその場から去る。 敗走するスペイン軍の一団を止め、ともにラミーロが退却する) |
|
第10場 | |
Recitativo | ラミーロ |
お前は何をしているんだ?何処へ行こうというのか、勇敢なる戦士よ?嘆かわしい臆病風など無視するんだ! 武装船団がやって来る。もしこいつらを通してしまったら、大変なことになる、万事休すだ。 |
|
テウティーレ | |
逃げて頂戴、ラミーロ!あなたのことは憎いけれど、でもやっぱり気にかかるの。 | |
ラミーロ | |
王女よ、何処に行くんだ? | |
テウティーレ | |
恐ろしい光景が広がる殺戮と虐殺の戦場から来たのよ。 僅かながら生き永らえたあなたたちの側の兵士が、勝鬨を上げるでしょうけれど、でも、両軍ともひどい惨状よ。 お父様も戦いに疲れ果て、傷つき、血を流していた。 そんな状況ではあっても、フェルナンドを捕え、獄舎へと連れて行くところよ。 |
|
ラミーロ | |
フェルナンドが?いったいどうして? | |
テウティーレ | |
彼はたった一人でお父様と戦っていたわ。そこへ突然、大勢のメキシコ人たちが現れ、彼らに囲まれてしまった。 何とか自分の身を護ろうとしていたけれど、ついに屈してしまった。 |
|
ラミーロ | |
それで今は? | |
テウティーレ | |
お父様の命令で、厳重に固められた監獄で死を待っているわ。私は、あなたも同じ運命を辿るのではないかと恐れているのよ。 お願いよ、後生だから、逃げて頂戴。メキシコはもうあなたにとって安全な場所ではない。 |
|
ラミーロ | |
僕が?逃げるだって? 来るんだ、同志たちよ。手分けしよう。 お前たちは僕と一緒に来い。別の隊は、松明と武器を持ち、敵の船団を叩くんだ。 業火の中で奴らを水中に沈めてやれ。我らの怒りの鉄槌から一人たりとも逃がすんじゃない。 |
|
テウティーレ | |
やめて! | |
ラミーロ | |
命令を実行しろ! (兵の一団が船に駆け上り、また小舟に火を放つ) |
|
テウティーレ | |
私の苦しみを分かってくれない、そんなひどい人だったの? | |
ラミーロ | |
君の頼みは聞けない。許してくれ、軍人としての務めを捨て去ることは出来ないんだ。 僕はそれ以外の一切の感情を捨てた。 復讐のため、名誉と栄光、我が同胞のため、そして戦士としての志のために。 |
|
Aria | ラミーロ |
激しく逆巻く風雨の中に、投げ込まれ揺れる船のよう。 | |
けれども嵐に負けはしない、難破船にはならじと決めた。 | |
名誉と愛に引き裂かれる、この魂。 | |
無敵の心だけが僕の名誉を満たしてくれる、 | |
そう、僕の愛をなだめてくれるのだ。 | |
第11場 | |
Recitativo | テウティーレ |
私の前から消えて頂戴、ひどい人!その不誠実な心で、僅かに残された私達の大切なものも壊し尽くすがいいわ。 あなた方が通った跡は、メキシコ人達の屈辱に満ちた血の大河になることでしょう。 裏切者め、私たちの神を神殿を踏みにじり、卑しめるがいい。その狂気を全うすれば、大虐殺も自慢の種になるというものよ。 けれど、この傷ついた心が嘆きの声を上げるより前に、裏切者め、私はこの身が被った不幸を終わらせてやる、この救いなき火に包まれて。 |
|
(燃えさかる小舟の中に身を投げ込もうとしたところに、ミトレーナは現れる) | |
第12場 | |
Recitativo | ミトレーナ |
待つのです、我が娘よ、今少し、運命の神を待たせておくのです。 私達の死はもはや避けられない、けれど、その馬鹿げた宣告が下されようと、慈悲深き運命の女神は、私やあなた、そしてあなたの父親の死に対する、復讐を見届ける幸運を許してくださるでしょう。 |
|
テウティーレ | |
そんなもの何にもなりはしないわ。 | |
ミトレーナ | |
それでも、横暴な侵略者がこれ以上メキシコの国境を越えて、他の地にまで害毒を広げることの歯止めにはなるのです。 | |
第13場 | |
Recitativo | アスプラーノ |
王妃様、そして王女様。…その勇敢なお心に、再び悲しみが満ちなければならないとは、何という残酷な運命でしょう! | |
ミトレーナ | |
アスプラーノ、どうしたのです? | |
アスプラーノ | |
主任司祭が、主祭神に祈誓したのです、この脅威にあって、どうすればよいのかを。 すると、ああ、何ということ。そのご神託の内容は、身の震えるような恐ろしいものでした。 |
|
テウティーレ | |
いかなるご託宣だったのです? | |
アスプラーノ | |
こうです。「テウティーレと、もう一人、スペイン人の男を生贄とすれば、この王国とこの国の王は救われるであろう」と。 大祭壇の前におられたモンテズマ様はすぐさま、怯むことなく右手を挙げられ、自らの娘とスペイン人の男を供犠に献ずることを誓われました。 |
|
テウティーレ | |
ああ、神様! | |
ミトレーナ | |
可哀そうな娘! | |
(司祭たちが聖堂からやって来る) | |
アスプラーノ | |
頭のおかしくなった聖職者連中です。ああ、どういうつもりだ!あっちへ行け! | |
テウティーレ | |
戦いの業火の中で、一人見捨てられた私。どうなってしまうというの? | |
ミトレーナ | |
余りに無茶な神命よ! | |
アスプラーノ | |
無慈悲に過ぎる運命です! | |
ミトレーナ | |
今少しお待ち頂けますでしょうか、司祭がた。悲しみの母が、その嘆きを吐露するのをお許し下さい。 可哀そうな娘よ、お前に迫りくる恐ろしい運命は、私のこの胸をとてつもない苦しみで呑み尽くします。 妻として、母として、私ほど不幸で惨めな王妃がいたでしょうか? 神々はあい携えて私の愛する者を殺そうとする、私はその犠牲者なのです。 |
|
テウティーレ | |
お母様、お願いです、神様の怒りにふれるようなことは言わないで。 私の血でその怒りを鎮めることが出来るのなら、この血を流します。 王国の人々のために、私はこの身を捧げて来ました。その身を祭壇に捧げるのですから、それは私の名誉となりましょう。 |
|
ミトレーナ | |
私の苦しみは激しすぎて、娘よ、まだその痛みを受け止めきれない。 無慈悲な星めぐり!残酷な神託!余りにも過酷な天からの宣告!何て私は惨めなのでしょう! |
|
テウティーレ | |
お母様、過分なご悲嘆はお母様らしくありませんわ。心静かに、私の死の悲しみをお忍び下さい。 そして、この国を救うために、私の身に課された運命を誇りに思ってほしいのです。 それこそ、神様のご意思であるとともに、私の思いでもあるのですから。 |
|
Aria | テウティーレ |
眼差しをお向け下さい、ああ神様! | |
私の大好きなお母様へと。 | |
私の苦しみ、またひとつには私の愛、 | |
その痛みが私を死なせるのです。 | |
我が苦き運命をお忍び下さい、大好きなお母様。 | |
どうか強き心を以て。 | |
私は死を恐れておりませんし、痛みも感じていないのですから。 | |
第14場 | |
Recitativo | ミトレーナ |
ならば行きなさい、あなたの死は報われることでしょう。 神様が無垢の娘ともうひとり、スペイン人の血を求められるというなら、 もう一人はフェルナンドでなければならない。あの男こそ、神の怒りに相応しき者。 その穢れた血は、この岸辺に悲しみの記憶をとどめることでしょう。 さあ、フェルナンドを血祭りに上げるのです。いいえ、でもそれは…、 私は何て恐ろしいことを考えているのでしょう…ああ、神様、なんて惨めな! けれど、誰がこの苦しみを止めることが出来ましょう? 誰がこの怒りを抑え、祭壇から犠牲者を奪うことが出来るというのでしょう? ああ、希望などありません。あの非道な男を、神様のご意思に従わせ、地獄に沈めるだけ。 他にはもう何もないのだから。 |
|
アスプラーノ | |
あの男に猛々しく立ち向かう勇気を、今や誰が持ちましょう? 鎖に繋がれていても、あやつの眼の鋭さには勇者さえ震え上がるのです。 |
|
ミトレーナ | |
黙りなさい、臆病者!あの男が無敵だなどというのは、ただの思い込みに過ぎません。 | |
アスプラーノ | |
ああ、では、ご命令を。 | |
ミトレーナ | |
あの男が収監されている塔に急ぎ、周囲に焚き木を積み上げるのです。 お前の臆病風を許す代わりに、あの男を逃げおおせようのない奈落へと突き落としなさい。 神々への供犠、我ら共通の意思として。 |
|
アスプラーノ | |
はい、直ちに。〔独白:おお、何と恐ろしい命令なんだ!〕 | |
ミトレーナ | |
これで、非道の侵略者とその取り巻きを葬ってやることが出来るわ。 | |
Aria | ミトレーナ |
我が娘、我が夫、怒り、そして運命が、 | |
私の心を苦しませ、命を絞り取る。 | |
この痛みはいや増して、千の苦悩が、ああ神様、 | |
惨めな心を襲うのです。 | |
気持ちは入り乱れ、何も見えず、聞こえない。 | |
貧しき嘆きの心は、怒りと愛の狭間を彷徨っています。 | |
第3幕 | |
第1場 | |
(町はずれにある塔。一人の男が、塔の入り口の前で数人のメキシコ人が倒れ伏しているのを見ている) | |
Recitativo | ラミーロ |
(フェルナンドと兵士達を先導し、塔の扉から出てくる) こちらです、兄上、さあ、もっと悪いことになる前に。敵の王は、頑迷にあなたの血を欲しています。 薄気味の悪い恥ずべき神託に従い、生贄にしようとしているのです。 武装した群衆と、猛り狂った暴君の姿が見えます。じき、兄上の逃げ道を塞ぎ、侮辱しようとここに来るでしょう。 |
|
フェルナンド | |
神託だと? | |
ラミーロ | |
いずれお分かりになるでしょう。私は、残っているメキシコの戦力を壊滅してやります。 神託に夢中になっているあの乱心の王をてんてこまいさせてやることが出来るでしょう。 |
|
フェルナンド | |
それは神のご意思にも叶っていよう。 だが、当面のところ、身を置く場所については、慎重になったほうが良さそうだ。 |
|
ラミーロ | |
連中の中の幾人かは武器を携えています。 そいつらと戦っている隙を見計らって、私は精鋭の兵どもが集結している邪教の寺を急襲してやりましょう。 奴らが人身御供になるのこそ見ものですよ。 |
|
フェルナンド | |
お前の計画に任せよう。運命がお前に求める仕事を成し遂げるのだ。名誉と賞賛に値することだろう。 | |
Aria | フェルナンド |
勇猛なる鷲も時には、射落とされるものだ、何故なら、 | |
彼は輪罠を見ることが出来ず、気づくことも出来なかったから。 | |
けれど、ひとたびその罠をかわしたならば、 | |
無敵の王者となり、敵を恐怖で蒼ざめさせるだろう。 | |
第2場 | |
Recitativo | ラミーロ |
さあ、これで兄上の身は安心だ。次は何としても、愛するあの人を護らねばならない。 おや、王がやって来るぞ。隠れて、奴が何をするつもりか覗ってやろう。 (全員、その場から去る) |
|
モンテズマ | |
(メキシコ人達に向かい)行け!裏切者の親玉は私一人で片を付ける。行って、ミトレーナを保護するのだ。 おお神よ、せめて妻だけでも守りたまえ。混乱の中で彼女が辱めを受けることのないように。 (モンテズマの兵士たちがその場を去ると、彼は剣を手に塔に進んでいく) これは?衛兵たちが倒れているではないか?そして扉が開いている?何とした事!フェルナンドが逃亡したのか? そんなことはさせんぞ!おお神よ、なんという仕打ち! 運命の女神は更なる悪戯を準備していたというのか?…何ということなのか! (彼が一人で塔の中へと入ってゆく。ラミーロが兵士達とともに現れる) |
|
ラミーロ | |
同志たち!扉を閉めて鍵をかけ、奴を塔の奥へと閉じ込めろ。王が閉じ込められ、自軍から孤立してしまえばこちらのもの。 慈悲深き神の定めは我らに味方している。王が逃げ出そうとも、待っているのは累々たる屍だ。 (兵士達は塔の入り口の扉に鍵をかける) |
|
Aria | ラミーロ |
喜びのさなかにあってさえ、悲しみが心を去ることはない。 | |
愛の絆はいつだって、私達から平和を奪ってしまうから。 | |
けれど私には聞こえる気がする、甘い声がこう語るのが。 | |
望みを持て、絶望するな、と。愛が愛に応えるように。 | |
第3場 | |
(アスプラーノが、塔に火を放つために集められた兵士たちを従えて現れる) | |
Recitativo | アスプラーノ |
兵たちよ!私の命令をj実行するのだ。手始めに、奴の逃げ口を全て塞げ。 次にその松明で、四方から塔に火を放て。 その後は、過酷な運命がスペイン人たちの大将を破滅に導いてくれるだろう。 そうだ、四方から火が上がり始めたぞ。 |
|
モンテズマ | |
(塔の頂上から)アスプラーノ、何をする気だ? | |
アスプラーノ | |
王様の声じゃないか? | |
モンテズマ | |
上を見るのだ、アスプラーノ! | |
アスプラーノ | |
(塔を見上げ、モンテズマがいるのに気づく)モンテズマ様が…王様が… | |
モンテズマ | |
裏切者め、お前はもはや忠臣とは言えぬ。運命は余を打ちのめしはするが、お前の行いもお見通しだぞ。 お前のその恥ずべき心に恐ろしい最期を約束し、他の者への戒めとするだろう。 (姿を消す) |
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アスプラーノ | |
誤解なのです…ああ、見えなくなってしまった…神様、私はどうすれば。 ああ、何ということをしてしまったのだ、何があったというんだ! |
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Aria | アスプラーノ |
恐怖、そして悲しみが心に重くのしかかる。 | |
痛みと絶望の余りに、涙が瞳をくもらせる。 | |
この呪わしき運命から、誰が王様を救う? | |
私はどうすればいい?取り返しのつかぬこの現実を。 | |
何をしてしまったというのだろう? | |
第4場 | |
Recitativo | ミトレーナ |
見よ、忠誠なる民よ、燃え上がる火柱の中で、あの無敵と言われたスペイン男が灰塵に帰してゆく。 行って、良き知らせを人々に伝えてほしい。 フェルナンドはもういないと。不死身と思われてきたあの男がついに最期を迎えたと。 そして言うのです、乱暴者がいなくなった今こそ、希望が見えてきたと。 |
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Aria | ミトレーナ |
灼熱の季節には、碧空でさえ脅威とうつる。 | |
けれどもやがて連れて来てくれるのだ、 | |
旅人を和ませる、静かなる次の季節を。 | |
傷ついた王国も復興することだろう、 | |
永久に続く平和への、確かな希望があるのだから。 | |
第5場 | |
(裏通路が閉ざされている聖堂。神像の脇に高い祭壇があり、供犠の準備がされている。 白装束のメキシコ人祭司が、テウティーレを招き入れる) |
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Recitativo | テウティーレ |
儀式ばることなく、さっさと、私の苦しみが人目にふれないよう行いなさい! 神様はこの魂の供犠をお受けになる、この仰々しい儀式を通じて。 それは人間の弱さの現れだわ。聖なる生贄となる者への少しの尊敬もない。 |
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Aria | テウティーレ |
痛みに歪むこの心の苦しみに、神様、どうか煩うことのありませんように。 | |
我らが民の痛みをこそ慰める、この涙だけをご覧頂きたいのです。 | |
誠を以てこの血を聖壇にお捧すれば、 | |
王国と、そしてお母様、お父様の平和を約束して下さるのですから。 | |
第6場 | |
Recitativo | ミトレーナ |
娘よ、今再び、悲しみの母の挨拶を受けておくれ。 この心は二つに引き裂かれているのです、王妃としての威厳と、そして更に奥深い、母親としての感情に。 神様はきっと、この気持ちをお分かり下さるでしょう。 |
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テウティーレ | |
お母様、ご自身を追い込んではいけません。 | |
ミトレーナ | |
ああ、分からないのね、娘よ、この悲しみの母の気持ちが。 ああ、アスプラーノがやって来る、どうして?…憔悴して、項垂れているようだわ。 (アスプラーノに向かい)アスプラーノ、私の命令を実行したのですね?フェルナンドは死んだのね? ああ、どういうことなの!何故答えない? |
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テウティーレ | |
〔独白:彼の姿を見ていると胸騒ぎがするわ〕 | |
ミトレーナ | |
あなたの様子を見て不安になりました。何があったか話すのです。 私の命令を実行したのでしょうね、私も成り行きを見ていましたよ。あのならず者の最期を。 |
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アスプラーノ | |
確かに、ご命令に従いました。心の中で、未知の衝動がそれを止めさせようとしていたにも拘わらず。 けれども、場当たり的で、血に飢えたような兵卒達が、やみくもにあなた様の言いつけを実行したのです。 とどまるところを知らぬ火の勢いは、フェルナンドの代わりに…、ああ、神様! |
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ミトレーナ | |
続けるのです。 | |
アスプラーノ | |
これ以上は申し上げられません | |
ミトレーナ | |
〔独白:胸が苦しくなってくる!〕 | |
アスプラーノ | |
モンテズマ様はお亡くなりになられました。… | |
ミトレーナ | |
神よ、それはいったい! | |
テウティーレ | |
可哀そうなお父様! | |
ミトレーナ | |
神々は無情だわ!どんなふうにして、どこであの人を見たのです? | |
アスプラーノ | |
確かに、私がお見受けしました。そしてお話もしたのです。 陛下は、フェルナンドが囚われていた塔の最上階にいらしたのです。 |
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ミトレーナ | |
で、フェルナンドは? | |
アスプラーノ | |
わかりません。 | |
ミトレーナ | |
それにしても、何故、夫は塔の中になど? | |
アスプラーノ | |
それも分からないのです。 申し上げられるのは、全力を尽くして、炎の中から陛下をお救い申し上げようとした、ということだけです。 けれども、最後に陛下を見たときには、猛火が襲い掛かり、それを消そうとするにも虚しい状況になっていました。 不覚にも陛下は、別の者を罰すべきはずの火に、呑まれてしまわれたのです。 |
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ミトレーナ | |
もう良い、わかりました。 あのスペイン人を急いで殺そうとしたことが、逆にあなたがひどい目に遭ってしまったということね。 この悲惨な逆境のさ中、私は何をすれば良いのでしょう?誰が私を慰めてくれるのでしょう? …ああ、愛する人よ、…あなたは何処にいらっしゃるの?…死んでしまったの? これが、神様がご託宣下さった、約束された平和だというのでしょうか? 震えと、驚愕と、蒼ざめ、血も凍るような思いしかないのに。 |
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アスプラーノ | |
私はあなた様のご命令に従っただけなのです。 | |
Recitativo accompagnato |
ミトレーナ |
真実はあなたの言葉とは裏腹ですね。つまり、私たちは勝利したのよ。 フェルナンドは疲れ果て、逃げようと企て、メキシコ湾を自らの軍を引き連れて彼の岸へと渡っていったのです。 |
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テウティーレ | |
可哀そうに、錯乱しているのね。 | |
ミトレーナ | |
勇気を持つのです、皆の者よ。今こそ、逃げる軍勢に追い打ちをかけるのです。 あの男が、虐殺と暴力の種子を撒き散らした、まさにその同じ道で、同じ目に遭わせてやるのです。 |
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Recitativo | テウティーレ |
気の毒なお母様。 | |
ミトレーナ | |
ああ、神様!…でも何を?…私はどうかしている! 残酷な希望よ、お前は私を徒に唆そうというののか、復讐のまぼろしを見せつけて。 最早やそんなことは不可能なのに。ああ、神様も結局は慰めにならない。 終わりのない怒りよ、お前は新たな痛手で私達を脅し、私達の苦しみを増やす。 お前の血を求めよう、我らの悲しみに素知らぬふりをする者よ。 ああ、あれは何を騒いでいるのか? |
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(聖堂の扉が打ち破られ、ラミーロが兵士の一団とともに入ってくる) | |
アスプラーノ | |
この世の終わりだ。 | |
テウティーレ | |
(司祭たちに向かって)早くするのです。この身を供犠に献じなさい。 | |
第7場 | |
Recitativo | ラミーロ |
ああ、あなたは間違っておられる。(彼はテウティーレを奪い、連れ去る) | |
ミトレーナ | |
涜神者め、何をするのです? | |
テウティーレ | |
離して頂戴、裏切者! | |
ラミーロ | |
慰めの国が見たいなら、来るんだ、愛する人よ。 | |
ミトレーナ | |
神様、ひど過ぎます! | |
ラミーロ | |
同志よ、直ちに私の命令を実行しろ。 惨めで浅ましい者たちよ、今こそお前たちの神の力の程を知るがいい。 (彼はテウティーレを伴ってその場を去る。スペイン兵達は、聖像を破壊して聖堂を出てゆく) |
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第8場 | |
Recitativo | アスプラーノ |
私は気の毒な王女様の後を付いていこう。 かくも恐ろしく野蛮な神聖冒涜の行いがなされたからには、大地は震え、聖堂は崩壊してしまうだろう。 |
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第9場 | |
Recitativo accompagnato |
ミトレーナ |
私はこの苦しみをやり過ごせるのでしょうか?沈黙していられるのでしょうか? そして死すことなく抵抗出来るのでしょうか? 私は全てに見捨てられ、一人ぼっちになってしまった。 寄る辺なき寡婦の惨めさ。娘を失い、国を奪われた!力も、神も、希望さえも。 神様は私をないがしろにされている。沈黙の神よ、何故このようなひどい事をされるのですか? 邪悪な者たちによる侮辱を、何故堪え忍ばれているのでしょう? 私にもやっと分かりました。この惨劇の中で、私達同様、あなた様も破滅し、打ち負かされてしまったのだと。 ならば私はどうすれば? 太陽も光もなくした、この夜の恐ろしい暗がり。永遠の眠りが、私の魂を葬り去ろうとしているわ。 そう、私の敗北も、私の煩労も、そして私の傷ついた心も全て、忘却の彼方へと。 (彼女が自らの命を断とうとするところへ、モンテズマが現れ、止める) |
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Recitativo | モンテズマ |
ミトレーナ、よせ! | |
ミトレーナ | |
あなた、生きていらしたのね? | |
モンテズマ | |
復讐は必ず遂げる。それから、共に死地へと赴こう。 私たちにこそ似つかわしき最期が我らの行いを飾ってくれるだろう。 スペイン人どもが我らの屍を踏み越え、不遜にも勝利するのは致し方あるまい。 奴らは得意げに自らの成果を自慢するだろう、われらの王国の滅亡と、余の死と、私達の娘に対する辱め、 そしてお前を鎖に繋いだことを。 |
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ミトレーナ | |
あなた、あなたはまだ生きているのではなくて?私が夢を見ているとでも?別の人をあなたと見間違えているとでも? あなたはこうして生きているわ、そう、衰えを知らぬ、無敵の、王としてふさわしき勇者として。そうではなくて? |
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モンテズマ | |
余の運命は、余の徳に相応しきものだ。 | |
ミトレーナ | |
それにしても、あの猛火の中をどのようにして? | |
モンテズマ | |
余の他は知らぬ秘密の地下道があるのだ。 それにしても、うっかり立ち入った塔に火を放たれるとは、全くもって不覚だった。 |
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ミトレーナ | |
あなたが亡くなってしまったと思い込んで、どれだけ涙を流したことでしょう。 | |
モンテズマ | |
わかっている。この悲惨な状況にあっても、余がそなたに最後の別れを伝えようと望んだのは、 妻よ、お前への愛ゆえ、それ以外の何ものでもない。 |
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ミトレーナ | |
死神のもとへと降りましょう。 | |
モンテズマ | |
我らは、あの恥ずべき忌まわしい兄弟の見ている前で死んでゆくのだ。 | |
ミトレーナ | |
けれどもその前に、尊大な人でなしの侵略者達が私達の足許に倒れ伏すべきですわ。 打ち破られた屍として。 |
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第10場 | |
Recitativo | モンテズマ |
運命の星々よ、お前は勝利した!目に見えるこの世界の全てが、お前の気まぐれの現れなのだから。 ここに、お前の神々と等しい力を持つと豪語していた王がいる。 今は烏合の衆どもに嘲笑われ、人々の指弾の的となり、打ち負かされ、押し潰され、他の者の栄光に隷属し、 新たな英雄譚の恰好の餌食となってしまった王が。 |
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Aria | モンテズマ |
娘は何処に?そして我が玉座は? | |
最早や父親ではなく、王ですらない。 | |
未曽有の悲痛、残酷な運命よ。 | |
これより激しき、天の暴君のいかずちとてないだろう。 | |
余に刃向う運命よ、見るがいい。 | |
さらになきほどに、悲嘆に暮れるこの姿を。 | |
今の余に、死は無慈悲とは言えぬ、むしろ思いやりなのだから。 | |
第11場 | |
(メキシコの街中にある広場。勝利の祝祭のための装飾がきらめいている。 片側に、奴隷となったメキシコ人達と、降ろされた軍旗。もう片側には勝利したスペイン軍がいる) |
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Coro | 人々の歌声 |
全ては戦いの守護神、我らが不敗の首領に帰せらるる、 | |
この至福なる栄光も、大勝利も、メキシコの滅亡も。 | |
スペイン国王万歳!フェルナンド万歳! | |
Recitativo | フェルナンド |
征服されし者たちよ、運命はお前たちに、より良き、そして更に価値ある行いと慣習を通じて、 あらたなる誉むべき王と、新たなる神を授ける。 よくよく気にとめて、その怒りを招くことのないようにするのだ。 私が今いるこの玉座は、我がためのものではない。 この座を得たからには、私はそれを、私がお護りするスペイン国王に明け渡すのだ。 |
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(人々の歌声が響く間に、彼は玉座から降りる) | |
Coro | 人々の歌声 |
(前段合唱の反復) | |
最終場 | |
(モンテズマとミトレーナが袖に現れ、アスプラーノが前に出てくる) | |
Recitativo | モンテズマ |
(小さな声でミトレーナに) ついて来るのだ、恐れてはならなぬ。 | |
ミトレーナ | |
(モンテズマに) 準備は出来ています、剣もここに。 | |
アスプラーノ | |
(フェルナンドに) 卓越した指導者よ、この私も、あなたの威儀ある姿にならい、あなた様の王の前に平伏し、 忠誠をお誓いいたしましょう。 |
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ミトレーナとモンテズマ | |
死ね、ならず者め! | |
(ほぼ同時に、モンテズマがフェルナンドを、ミトレーナがラミーロを手にかけるために襲い掛かるが、 モンテズマはアスプラーノに、ミトレーナはテウティーレに制止され、二人は武器を奪われる) |
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モンテズマ | |
天はどこまでも余に刃向うのか。 | |
テウティーレ | |
(ミトレーナに) 気持ちをお鎮め下さい。 | |
ミトレーナ | |
憎むべき運命だわ。 | |
モンテズマ | |
(フェルナンドに) ぐずぐずせずに余を殺せ! | |
フェルナンド | |
怒りを鎮めるのだ。 | |
モンテズマ | |
ここに、罪に穢れた余の腕があるぞ。さあ、死刑宣告を下すが良かろう。 | |
ミトレーナ | |
まずはこの私を罰しなさい、狂気の勝利者よ。 もし私に罪があるというなら、私に死を言い渡しなさい。 |
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モンテズマ | |
(ミトレーナに) お前の死を目の当たりにするなど、 そのような私の悲しみが大きくなるようなことをするのはやめてくれ。 |
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フェルナンド | |
そなたたちは生きるのだ、高貴なる魂たちよ。それどころか、私は望んでいるのだ、 そなたたちが安寧のうちに生き、また、そなたたちの友人も、玉座とともに安泰であることを。 |
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ミトレーナ | |
何ということを! | |
モンテズマ | |
とんだお笑い草だ! | |
フェルナンド | |
我が国王陛下に忠誠を誓うなら、私はそなたたちがこの王国に留まり続けることを拒みはせぬ。 その約束の証として、弟のラミーロを、彼の神聖なる婚礼のあかつきに、そなたたちに渡すとしよう。 |
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モンテズマ | |
そんなみっともない結婚話など。 | |
ラミーロ | |
いえ、むしろ、まさに神託によって求められたものです。私達の供犠はこうして成就するのです。 | |
アスプラーノ | |
祝福さるべき供犠だ! | |
モンテズマ | |
〔独白:おお、そんなことがあり得るのか!〕 | |
テウティーレ | |
そんなこと出来るわけが…… | |
ミトレーナ | |
でも、それが現実よ。 | |
アスプラーノ | |
(モンテズマに) ご決断は? | |
テウティーレ | |
(ミトレーナに) 何もおっしゃらないのですか。 | |
モンテズマ | |
〔独白:ああ、痛恨の極みだ〕 | |
ミトレーナ | |
(モンテズマのほうを見て) 私は、すすんで賛成いたしましょう。 | |
モンテズマ | |
余もまた同意を与える。 | |
ミトレーナ | |
喜ばしき魂よ、そなたたちの至高なる愛の誓約を交わしなさい。 ついに、徳が敵意に勝利したのですから。 |
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モンテズマ | |
そなたたちの神は、大いなる智慧を示してくれた。 メキシコは敗れた、それは事実だ。しかし、今再び、よみがえるのだ。 |
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Coro | 人々の歌声 |
婚礼の神、恋人たちの甘き希望よ、 | |
終わることなき愛の絆を以て、魂と心をひとつに繋げよ、 | |
気高く高貴なる、この二人のために。 | |
終わり | |
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