マルヴェッツィ
マレンツィオ
カヴァリエーリ
カッチーニ
ペーリ
バルディ
アルキレイ
作曲
『ラ・ペレグリーナのためのインテルメディオ』
全6幕
台本
ジョヴァンニ・デ・バルディ
オッタヴィオ・リヌッチーニ
ジョヴァンバティスタ・ストロッツィ
ラウラ・ルッケジーニ
Cristofano Malvezzi (1547 - 1599)
Luca Marenzio (1553 - 1599)
Emilio de' Cavalieri(1550 - 1602)
Giulio Caccini (1550 - 1602)
Jacopo Peri(1561 - 1633)
Giovanni de' Bardi(1534 - 1612)
Antonio Archilei (1543 - 1612)
"Intermedi(1589)per ≪La Pellegrina≫"
Libretto di
Giovanni de' Bardi
Ottavio Rinuccini
Giovambattista Strozzi
Laura Lucchesini
NAXOS MUSIC LIBLARY
解説
インテルメディオT | |
L'ARMONIA DELLE SFERE | 天体のハルモニア |
(青い背景幕が蒼空を表わし、そこから調和の化身が雲に降り立つ) | |
Dalle pìù alte sfere | 至高の天空より |
詩 ジョヴァンニ・デ・バルディ | |
作曲 アントニオ・アルキレイ あるいは エミリオ・デ・カヴァリエーリ |
|
調和の化身 | |
至高の天空より、セイレーンの優しき導きを得、 | |
人間たちよ、私はお前たちのもとへとやって来た。 | |
翼を持てる天の伝令が、この大いなる時の報せをもたらす。 | |
お前たち人間よりも崇高なるミネルヴァやヘラクレスらにさえ、 | |
この光の射すことはなかったというのに。 | |
(青い背景幕の色が濃く変化していき、星空が現れる。 4つの雲に乗るセイレーンたちによる、二重、三重の歌声が響きわたる) |
|
Noi, che, cantando (a8) | 私たち皆は歌い(8声) |
詩 オッタヴィオ・リヌッチーニ | |
作曲 クリストファノ・マルヴェッツィ | |
セイレーン | |
私たち皆は歌い、その甘き歌声を以て天を舞う。 | |
喜びのこの日、気高き魂と美しきその姿の、 | |
栄えある奇蹟を賛美するため、私たちは天界からやって来た。 | |
(セイレーンたちの上に天界がその姿を見せる。 三つの大きな雲が現れ、中央の雲の上には宿命の化身が玉座に着き、 宇宙の運行を司る王笏を手にしている。足下には三人の運命の化身が従う) |
|
(天球が雲の左右に据えられている。 その上、また前後、はるか彼方の天上で、少年を伴った英雄が立ち上がる。 天使たちが三つの合唱隊に分かれ、運命によって先導されてゆく) |
|
Sinfonia (a6) | 6声のシンフォニア |
作曲 クリストファノ・マルヴェッツィ | |
Dolcissime Sirene (a6) | かくも甘美なるセイレーンよ(6声) |
詩 オッタヴィオ・リヌッチーニ | |
作曲 クリストファノ・マルヴェッツィ | |
少年たち | |
かくも甘美なるセイレーンよ、天の方へと行くが良い、 | |
私たちもまた心地よき歌を唇に乗せ、 | |
あなたたちの仲間に加わろう。 | |
Non mai tanto splendore (a6) | こんなにも輝いてなど(6声) |
詩 オッタヴィオ・リヌッチーニ | |
作曲 クリストファノ・マルヴェッツィ | |
セイレーン | |
こんなにも輝いてなどいなかった。 | |
アルゴスも、サイプロスも、デロスでさえも。 | |
A voi,reali Amanti (a6 cori) | 汝ら、まことの恋人よ (6声) |
詩 オッタヴィオ・リヌッチーニ | |
作曲 クリストファノ・マルヴェッツィ | |
運命とセイレーン | |
(掛合いで) | |
汝ら、まことの恋人よ、我ら天界の精霊が敬意を表す。 | |
フローラ(フィレンツェ)もまた、お前のたちのために己が身を飾っています。 | |
花々だけでなく、真珠やルビーを以て、 | |
混じりけなき銀は、まさにアルノの風波、 | |
汝らのためにきらめき立つ。 | |
大いなる君子よ、ここは黄金の岸辺。 | |
大いなる支配者のために、天界の花々と宝石を散りばめ、花輪を編みましょう。 | |
その高貴なる姿を、天の星々で飾ることにしましょう。 | |
太陽と月、その他もろもろの大きなる象徴を以て。 | |
(セイレーンが雲に乗り、ゆっくりと運命の上方へと身を移す。 やがて全てが統一され、皆はともにマドリガーレを歌う) |
|
Coppia gentil (a6) | いとも崇高なる二つの星(6声) |
詩 オッタヴィオ・リヌッチーニ | |
作曲 クリストファノ・マルヴェッツィ | |
全員で | |
いとも崇高なる愛の二つ星よ、 | |
地上の幸せ、悦びのためでなく、愛の炎のためにこそ、 | |
笑い、そして天界の祝福を願おうではないか。 | |
インテルメディオU | |
LA CONTESA CANORA FRA LE PIERIDI E LE MUSE | ピエリデスとミューズの歌合戦 |
詩 オッタヴィオ・リヌッチーニ | |
作曲 ルカ・マレンツィオ | |
(緑なす庭園にて。 小さな丘があり、16人の森の妖精、ハマドリュアデスたちが楽器を手に居並ぶ。 丘の反対側には、苔むした洞窟があり、そのひとつに、 ピエロスの9人の娘たち、ピエリデスが座している。 ピエリデスは、もう一方の洞窟にいる9人のミューズに歌試合を挑んだ。 ハマドリュアデスはその審判役である。) |
|
Sinfonia (a5) | 5声のシンフォニア |
Belle ne fe' Natura (a3) | 自然こそ美しきもの(3声) |
ハマドリュアデス | |
自然こそ美しきもの、なぜなら美と調和は不可分であるから。 | |
我らは音楽の神髄を心得る者。ゆえにこそ、 | |
厳正かつ厳粛なこの歌試合の審判を、我らハマドリュアデスが司ろう。 | |
Chi dal delfino (a6) | イルカたちのためにでは(6声) |
ピエリデス | |
海の嵐に揉まれるイルカたちを援けるために歌うのではなく、 | |
黄泉の国の妻を救うためにリラを奏でるのでもない。 | |
我らの歌の優美と比べるならば、天界の奏楽の麗しさも色褪せることだろう。 | |
Se nelle voce nostre (a12) | 私たちの声が(12声) |
ミューズ | |
(岩山に歌声がこだまする) | |
私たちの声が、その美しきしらべと音色を響かせたならば、 | |
それはまさに、祝福に満ちた天界の賜物、 | |
神々の意に適った美の本質なのです。 | |
汝ら、透き通る泉に住まう者、妖精たちよ、よく聴き分けなさい。 | |
私たちの歌声があなたたちに喜びを与えたならば、 | |
神々に恭順を示し、そしてこの妙なる歌声に、勝利の桂冠を授けるように。 | |
O figlia di Piero (a6, a18) | ピエロスの娘たちよ(6声、18声) |
ハマドリュアデス | |
おお、ピエロスの娘たちよ、何と愚かなことであろう? | |
そなたたちの喉は、かくも甘き歌声に比すれば、たかだか影のようなもの。 | |
ハマドリュアデスとミューズ | |
(たがいにこだまし合いながら) | |
あの者たちに、そうとも私たちに、完全なる美ゆえの栄光を。 | |
おお、天よ、大地よ、そして風わたる大気よ、 | |
このような妙なる歌声を、決して耳にしたことはなかったであろうに! | |
(ハマドリュアデスはミューズたちに勝利の軍配を上げる。 敗れたピエリデスたちは、カササギに姿を変えて、啼きながらその場を去ってゆく) |
|
インテルメディオV | |
APOLLO UCCIDE IL MOSTRO A DELFO | アポロンがデルフォイで怪物を退治する |
詩 オッタヴィオ・リヌッチーニ | |
作曲 ルカ・マレンツィオ | |
(森の中の洞窟。そこは焦土となった草木に囲まれた場所であり、つまり、 恐ろしい怪物の棲家でもある。そこへデルフォイの人々が嘆きながら登場する) |
|
Qui di carne si sfama (a12) | この場所で肉を貪り喰らう(12声) |
デルフォイの人々 | |
この場所で肉を貪り喰らうのだ。そうとも、あの恐竜の棲家なのだ。 | |
奴は火を吐き、咆哮し、瘴気を撒き散らす。 | |
草木も花々も踏みしだきながら。 | |
いったい何処にいるのだ? | |
ジョーヴェは我らの嘆きを聞き届けてはくれないのか? | |
(洞窟の入り口から、怪物の頭が覗くのを見て、人々が恐れおののく) | |
おお、天の父よ、不運に見舞われたデロスに慈悲を垂れたまえ。 | |
さあ、救いを請い願おう、涙と嘆きを以て。 | |
稲妻といかづちを召喚するのだ、お前たちを喰い尽くそうとする奴への仕返しのために。 | |
(デルフォイの人々の祈りに応え、 アポロンが弓と矢を携えて颯爽と天から舞い降りる。 怪物が再び姿を現し、鼻息荒く火を吹きかけるが、 最期にはアポロンが怪物を退治し、歓喜の舞を踊る) |
|
O valoroso Dio (a4) | おお、勇猛果敢なる神よ(4声) |
デルフォイの人々 | |
おお、勇猛果敢なる神よ、おお、輝ける卓越の至高者よ。 | |
見るがいい、この悪魔の龍を。 | |
そなたの無敵の腕によって打ち倒された! | |
恐ろしい怪物は死んだ、皆の者よ、もう大丈夫だ。 | |
来れ、アポロン、デロスの人々。歌声を響かせようではないか。 | |
おお、可憐な妖精たちも一緒になって、天を仰ぎながら。 | |
(残ったデロスの人々も戻ってきて、皆がともに歓喜の踊りに加わる) | |
O mille volte mille (a8) | 千回も、さらにはまた千回も(8声) |
千回、さらにはまた千回も、歓びの日を祝おう。 | |
おお、祝福されし邑々、喜ばしき丘の連なりよ、 | |
お前は見たはずだ、恐怖の龍獣が血の海に沈むのを。 | |
奴は吐く火と瘴気を以て、花々、草木そして神々の森をも根絶やしにした。 | |
さあ、思いを込めて歌い、踊ろう。この大いなる勝利を、 | |
永遠にして偉大なる神々に感謝して。 | |
インテルメディオW | |
VIENE PROFETIZZATA L'ETÀ D'ORO | 黄金時代が予言される |
(翼を持った龍に牽かれる車に乗って、魔法使いの女が現れる。 舞台の中央まで進んできたところで、ぴたりと静止し、上空はるか、 火炎に包まれながら生きているサラマンドラを召喚する) |
|
Io, che dal Ciel cader | 私には天から打ち落とすことも |
詩 作者不詳 | |
作曲 ジュリオ・カッチーニ | |
魔法使いの女 | |
私には天から打ち落とすことも出来る、そうとも、そこに浮かぶ月でさえ。 | |
お前に呼びかけよう、空の高みにありて、完全なる天界を知る者よ、 | |
お前をここに召喚するために。 | |
そして私に告げよ、全能にして不死なるジョーヴェが、 | |
地上にそのあらゆる恵みを垂れたもうその時を。 | |
(魔法使いの女が退場すると、燃え盛る巨大な雲が空に現れる) | |
Sinfonia (a6) | 6声のシンフォニア |
作曲 クリストファノ・マルヴェッツィ | |
(雲が割れ、その狭間から、召喚を受けたサラマンドラが姿を現す) | |
Or che le due grand' Alme (a6) | 二つの大いなるみ恵みが(6声) |
詩 ジョヴァンバティスタ・ストロッツィ | |
作曲 クリストファノ・マルヴェッツィ | |
サラマンドラ | |
二つの大いなるみ恵みが、天上の愛にかたく結ばれ、 | |
世界は栄えある歓喜に満たされる。 | |
全ての魂は神々の徳によって生命を得、 | |
数多の嘆きの理由は消え去り、喜びの歌が永久に響き渡るであろう。 | |
(燃え盛る雲が閉じて消え去る。すると舞台の上には炎の洞窟が現れる。 それはダンテの地獄さながらだ。怒りの化身と魔王が嘆きのマドリガルを歌う。 というのも、来たる黄金時代が彼らの餌食を奪ってしまうから) |
|
Miseri abitator del cieco Averno (a5) | 暗鬱なるアベルノの湖の惨めな住人は(6声) |
詩 ジョヴァンバティスタ・ストロッツィ | |
作曲 ジョヴァンニ・デ・バルディ | |
サラマンドラ | |
暗鬱なるアベルノの湖の惨めな住人は、 | |
その憂鬱の王国に嫉妬と蔑みをもたらす! | |
際限のなき恐怖、果てなき苦しみよ! | |
大地の底深き、過酷なる地獄よ。 | |
最早や死神の軍勢も汝を頼まぬ、 | |
門を閉じよ、黄泉の国の門を、永久に! | |
インテルメディオX | |
ARIONE E IL DELFINO | アリオンとイルカ |
(海の光景。イルカに牽かれた真珠貝に乗ったアンフィトリテが、波間から現れる。 彼女は海の妖精たちを伴っている) |
|
Io, che l'onde raffreno | 私は波さえも黙らせる |
詩 オッタヴィオ・リヌッチーニ | |
作曲 クリストファノ・マルヴェッツィ | |
アンフィトリテ | |
私は波さえも黙らせる、そうとも、この力によって。 | |
なぜなら私は海の女王だから。 | |
私の前に首を垂れ、ひざまづくが良い、海中のすべてのニンフたちよ。 | |
おお、高貴なるお二人に、あなた方に敬意を表するため、 | |
私はこの大海の深みよりやって来たのです。 | |
E noi, con questa bella diva (a5) | 私たちもまたうるわしの女神とともに(5声) |
詩 オッタヴィオ・リヌッチーニ | |
作曲 クリストファノ・マルヴェッツィ | |
ニンフたち | |
私たちもまたうるわしの女神とともに、われらの女王アンフィトリテと、 | |
真珠と珊瑚で飾られた、光り輝く水面を後に、 | |
そなた、大いなる王子を誉めまつるために参ったのです。 | |
Godi, Coppia Reale (a5) | 喜びたまえ高貴なるお二人よ(5声) |
詩 オッタヴィオ・リヌッチーニ | |
作曲 クリストファノ・マルヴェッツィ | |
アンフィトリテ | |
喜びたまえ、高貴なるお二人よ、 | |
大いなる熱意を以て、大地と海と、 | |
天とがそなたを誉めまつるのだから。 | |
Che vede uscir da voi (a5) | それはあなたがもたらしたもの(5声) |
詩 オッタヴィオ・リヌッチーニ | |
作曲 クリストファノ・マルヴェッツィ | |
ニンフたち | |
それはあなたのもたらしたもの。 | |
かくなる光彩を放つ種子のこと。 | |
それは天球の極から極を包み込む。 | |
E discacciar dal mondo (a3) | 世界のはるか彼方へ(3声) |
詩 オッタヴィオ・リヌッチーニ | |
作曲 クリストファノ・マルヴェッツィ | |
アンフィトリテと二人のニンフ | |
世界のはるか彼方へと、 | |
この恐ろしき龍を去らしめよ。 | |
そやつの渇きは貪り喰らうほどに、 | |
さらに深くなっていくのだから。 | |
Onde farà ritorno (a5) | 波は戻してくれるでしょう(5声) |
詩 オッタヴィオ・リヌッチーニ | |
作曲 クリストファノ・マルヴェッツィ | |
ニンフたち | |
波は戻してくれるでしょう、 | |
素晴らしかった過ぎ去りし日々を。 | |
そしてあなた方への賞賛を。 | |
おお、高貴にして気高きお二人に。 | |
(アンフィトリテとニンフたちは、巨大なガレオン船の到着を告げるファンファーレが鳴るや、姿を消す。 ガレオン船では大勢の船乗りたちによる歌や奏楽が響きわたっている。 船は舞台上を滑るように進み、高貴なる二人に敬意を表するため帆を上下させる) |
|
Fanfara | ファンファーレ |
作曲 伝ジロラモ・ファンティーニ | |
Sinfonia (a6) | 6声のシンフォニア |
作曲 クリストファノ・マルヴェッツィ | |
(アリオンが船首に立っている。そのいでたちは、いにしえの詩人さながらで、 月桂樹の冠を頭上に頂いている。 彼は船乗りたちの垂涎の的となっている数多の財宝とともに、イタリアから海を渡って来た。 船乗りたちが彼を亡き者にしようと企んでいることを知った時、彼は頼み込んで、 最期のラメントを歌わせてもらう) |
|
Dunque fra torbide onde | かくも暗き波間で |
詩 作者不詳 | |
作曲 ヤコポ・ペーリ | |
アリオン(こだまとともに) | |
かくも暗き波間で、僕は末期の歌をうたう。 | |
優しきこだまよ、どうかお前の甘き声を以て、 | |
僕の嘆きを繰り返しておくれ。 | |
ああ、この涙、そして心の痛みよ! | |
ああ、僕はこの惨めで不本意な死を死んでゆく! | |
誰か僕に話しておくれ、地にあっても天にかけても、 | |
この恐怖はまぼろしなのだと。 | |
でももしこの凶事の予感が本物ならば、 | |
どうか哀れんでほしい、この僕の運命を。 | |
(アリオンが嘆きの歌をうたっている間にも、船乗りたちは短剣を手にして少しづつかれににじり寄って来る。 彼らが飛びかかってきたとき、アリオンは船の外の海原へと飛び込んだ。 彼を救ったのは、その歌に魅了されたイルカたちである。 船乗りたちは彼が溺れてしまったと思い込み、財宝を山分けしながら、愉快そうにマドリガルを歌う) |
|
Lieti solcando il mare (a7) | 喜びの海を渡り(7声) |
詩 オッタヴィオ・リヌッチーニ | |
作曲 クリストファノ・マルヴェッツィ | |
船乗りたち | |
喜びの海を渡り、歌おうじゃないか、相棒たちよ、 | |
神々は俺たちの望みを叶えてくださったのだから。 | |
アリオンよお気の毒様だ、氷のように冷たい海の中で眠るがいい。 | |
さあ、奴の財宝を山分けしよう。 | |
インテルメディオY | |
IL DONO DI GIOVE AI MORTALI DI RITMO E ARMONIA |
ジョーヴェから人々へ、リズムとハルモニアの贈り物がされる |
(夜明けの空の光景。昇る太陽の光が舞台全体を充たし、七つの雲が天上より舞台の前方へと、流れるように移動する。 遠くそびえるオリュンポス山の頂、ジョーヴェは玉座に座し、その眷属たちが高みに浮かぶ二つの雲に乗って、彼の前に整然と並んでいる。 低い場所にある五つの雲には、三人の女神グラティアと、九人のミューズ、四人のクピド、中央の雲には、歌い踊るリズムとハルモニアの化身を伴ったアポロンとバッコスが乗る。 彼らはジョーヴェからの贈り物を人間界にもたらすのだ。 この中央の雲が、まず舞台の上に降りてくる) |
|
Dal vago e bel sereno (a6) | 輝き澄み渡る天空は(6声) |
(Dapprima eseguito come Sinfonia) | (シンフォニアを伴って) |
詩 作者不詳 | |
作曲 クリストファノ・マルヴェッツィ | |
アポロン、バッコス、リズムとハルモニア、二人のクピド | |
輝き澄み渡る天空は、太陽が沈むこともなく、 | |
百合と菫も霜に枯れることはない。 | |
喜びの歌声と舞踏を、今こそ地上の繁栄と祝福のために降り注ごう。 | |
(天界の眷属たちが人間たちに呼びかけている間、アポロンの乗った雲が空の低いところに浮遊している。この楽曲が奏されている間に、残りの四つの雲も低い場所まで降りてくる) | |
O quale, O quale risplende (a6) | おお、あらゆるものが、おお、すべてこぞりて(6声) |
詩 オッタヴィオ・リヌッチーニ | |
作曲 クリストファノ・マルヴェッツィ | |
天の眷属たち | |
おお、あらゆるものが、おお、すべてこぞりて光り輝く、 | |
夢のごとく浮かぶ、彩雲のそのさまよ! | |
出で来よ、羊飼いたち、そして愛くるしきニンフたち、 | |
奏でられし天空のハルモニアの楽の音を、その耳で聴かんがために。 | |
(神々すべてが登場し、宙に浮かぶ。召喚に応じて集まった人々の頭上からは、黄金の雨が降り注ぐ。ジョーヴェは玉座から人々へ挨拶の言葉を発した) | |
Godi, turba mortal | 楽しめ、汝ら人間たちよ |
詩 オッタヴィオ・リヌッチーニ | |
作曲 エミリオ・デ・カヴァリエーリ | |
ジョーヴェ | |
楽しめ、汝ら人間たちよ、 | |
歓喜して、あふれるばかりのこの慈愛を受けよ。 | |
歌と舞を以て、日々の労働の憂さを忘れるがよい。 | |
(人々もまた、次に奏でられる音楽に声をあわせ歌う。 その間に、下方に位置していた五つの雲はリズムとハルモニアを贈るために降りてくる) |
|
O fortunato giorno (a7 cori) | おお、幸いなるこの日よ(7声の合唱) |
詩 オッタヴィオ・リヌッチーニ | |
作曲 クリストファノ・マルヴェッツィ | |
全員で | |
おお、幸いなるこの日よ、希望と喜びに満ちて、 | |
地上も天も、歓喜の歌声にひとつとなる。 | |
輝く時代がこうしてやって来た、 | |
フェルディナンドによって、公国は真の姿を取り戻したのだから。 | |
不朽の翼に乗りて、峰からまた頂きへと、 | |
この偉大なる名前とともに、名声は飛翔しゆくだろう。 | |
(神々と人々が、ともに大円舞を舞う。 三人の女声によりトリオが歌われ、それに合わせての踊りである) |
|
O che nuovo miracolo (a5, a3) | おお、新たなる奇跡が(5声、3声) |
詩 ラウラ・ルッケジーニ | |
作曲 エミリオ・デ・カヴァリエーリ | |
全員で | |
おお、新たなる奇跡が、見よ、この大地に降りてくるのを。 | |
崇高なる天界の姿を以て、神々が世界をあまねく照らす。 | |
身よ、ヒュメーンとヴィーナスが、ついにこの地上に降り立つさまを。 | |
三人の乙女たち | |
天の国のジョーヴェは、その寛容によりてエトルリアを治むる、 | |
偉大なる英雄の清廉と献身のことを聞こし召す。 | |
その聖なる玉座が、踊りと歌声を送りたもう。 | |
全員で | |
如何なるみ業を以て、おお、至高の方々よ、 | |
この大地を理想の国として下さるのであろう? | |
三人の乙女たち | |
私たちは天界の善と美を以て、 | |
この地上を天に等しきものとなしましょう。 | |
全員で | |
あの輝ける時代が戻ってくるのでしょうか? | |
三人の乙女たち | |
黄金時代が再びやって来るのです。 | |
光り輝く御世は大公にこそふさわしい。 | |
全員で | |
あらゆる悪徳が消え去り、滅ぼされるのはいつのことでしょう? | |
三人の乙女たち | |
この新しき太陽が姿を現せばすぐのこと。 | |
百合と菫が咲きほこることでしょう。 | |
全員で | |
おお、幸いなる季節よ、フローラ(フィレンツェ)に栄えあれ! | |
三人の乙女たち | |
アルノの流れよ、汝は大いなる祝福に充たされよう、 | |
幸いなるこのロレーヌとの結婚によって。 | |
全員で | |
おお、今まさに、この愛の輝きが生まれ出んとしている! | |
三人の乙女たち | |
それは燃え上がる炎、それは枯れた心をも愛で潤す。 | |
全員で | |
見るがいい、クピドとフローラが天を愛の炎で燃え立たせるさまを。 | |
三人の乙女たち | |
大公の花嫁のために、ニンフと羊飼いたちは可憐な花々を以て勝利の花冠を紡ぐ。 | |
全員で | |
幸いにして誇り高きフェルディナンド。 | |
三人の乙女たち | |
気高き処女が清浄な炎をその胸に抱き、愛の時を待っています。 | |
全員で | |
おお神々よ、われらに公国の血統を示したまえ。 | |
三人の乙女たち | |
すべての国々に幸いをもたらす神人が生まれるでしょう。 | |
全員で | |
われらの白鳥が、メディチとロレーヌの栄誉を永遠に守り奉る。 | |
三人の乙女たち | |
すべての非凡なる事蹟はジョーヴェにこそ帰す。 | |
お二人の上に、大公夫妻よ、ジョーヴェは不朽の名声を授けたまうのです。 | |
全員で | |
木々は蜜をもたらし、河は乳を搾り出す。 | |
誰もが愛を語り、邪な心を去って、クーリオは栄光の物語を紡ぐことだろう。 | |
優美なる舞がわれらを幸福の谷へと導き、 | |
ニンフと羊飼いたちがアルノの名誉を大空に向けて歌う。 | |
ジョーヴェはお前たちの大いなる心を、寛大にも受け入れてくださるだろう。 | |
だから喜びの歌を以て誉めまつるのだ、クリスティーヌとフェルディナンドを。 | |
終わり | |
表紙へ戻る | (原文イタリア語) |