ヘンデル作曲 オペラ
『アリオダンテ』
全3幕
台本:アントニオ・サルヴィ
George Friedrich HANDEL(1685-1759)"Ariodante" HWV33
Libretto di Antonio Salvi
Ouverture | Largo - Allegro - Allegro |
第1幕 | |
第1場 | |
(王宮の部屋で。鏡の前で自分の姿に見惚れるジネーブラ。他に女官ダリンダ、廷臣、侍女がいる) | |
Arioso | ジネーブラ |
うっとりさせるのよ、この魅力で。 | |
このいきいきとした表情、私の大切な方の前でもっと美しくなるの。 | |
(鏡から顔を上げる。廷臣と侍女たちがその場を離れる) | |
Recitativo | ダリンダ |
王女様はすっかり恋に夢中になってらっしゃるのね? | |
ジネーブラ | |
この心は高貴な炎に燃えているわ、愛の炎よ。 | |
ダリンダ | |
お父上、つまり、国王陛下はご賛成で? | |
ジネーブラ | |
勿論よ、乗り気でいるわ。 | |
ダリンダ | |
それは何よりですわ、ご満悦ですこと。 | |
(ダリンダ去る) | |
第2場 | |
(ジネーブラ、ポリネッソ、そこへダリンダが戻ってくる) | |
Recitativo | ポリネッソ |
ジネーブラよ? | |
ジネーブラ | |
どこまで厚かましいの?ダリンダ、ここにいて頂戴。 | |
ポリネッソ | |
あなたのその瞳の輝きなしに、私は生きてはいられないのだ。だからどうか私のことを… | |
ジネーブラ | |
公爵、あなたは私をぞっとさせるだけですわ。 ですから、私の恋人になろうなんて、もうお考えにならないでください。 |
|
Aria | ジネーブラ |
怒りの女神テシフォーネすら、 | |
閣下、あなたほどおぞましくはないわ! | |
愛は駆け引きのようなもの、 | |
あなたの心は燃え上がっても、私の心には寒気を呼ぶの。 | |
(退場) | |
第3場 | |
(ポリネッソとダリンダ) | |
Recitativo | ポリネッソ |
お高くとまった女だ! | |
ダリンダ | |
閣下、無駄ですわ、お諦めください。あの方にはアリオダンテ様が… | |
ポリネッソ | |
わが恋敵というわけか? | |
ダリンダ | |
深く愛しておいでです。 | |
ポリネッソ | |
父親はどうなのだ? | |
ダリンダ | |
お二人のお気持ちを認めていますわ。あなた様に何が出来ましょう? | |
(優しく相手を見つめる) | |
Aria | ダリンダ |
どうぞまなこをお開きください、 | |
眼に見えぬ、この心の疼きをご覧いただきたいのです。 | |
あなた様ゆえ、ため息する者がいることを、 | |
あなた様はまだご存知ないのです。 | |
この吐息の中に、ああ、こめているのに! | |
胸に燃えさかる甘い炎を。 | |
(退場) | |
第4場 | |
(ポリネッソ一人で) | |
Recitativo | ポリネッソ |
わが野望よ、さあ、どうする?諦めるのか?いや、ポリネッソよ、大丈夫だ! ダリンダはお前を愛している。 智略に長けたこの手腕を以って敵を打ち負かし、玉座へと昇ってやるのだ。 |
|
Aria | ポリネッソ |
粗末な羊毛をまとった詐欺師など、お笑い種、それこそごまかし。 | |
賞賛を得るほどの大胆な慎重さこそ、 | |
器用な流儀を身につけたことの証しなのさ。 | |
(退場) | |
第5場 | |
(宮廷の庭で。アリオダンテがいる。後からジネーブラが登場する) | |
Aria | アリオダンテ |
地上の万物が自らの言葉で愛を語る。 | |
流れる瀬音、草原、そしてブナの林まで、 | |
愛に心を奪われたこの私に。 | |
Recitativo | アリオダンテ |
だから私も、永遠にあなたに愛を語ろう、愛しき人よ。 | |
ジネーブラ | |
忠実なわが心よ、私も同じですわ。 | |
アリオダンテ | |
あなたこそ、わが支配者。私はそのしもべ! | |
ジネーブラ | |
アリオダンテ様、愛の神の放った矢に感謝しましょう、 愛する心は、最早や誰をも支配などしません。 愛される者も下僕などではなく、この心に対する絶大な力を持っているのです。 |
|
アリオダンテ | |
驚きのあまり、まだ信じられない。 | |
ジネーブラ | |
さあ、この私の手を、あなたに捧げる愛のしるしとしてください。 | |
Duo | ジネーブラ |
この手から受け取って頂きたいのです、私のまごころを。 | |
アリオダンテ | |
その手より、私の愛のしるしを受け取ろう。 | |
二人で | |
たとえ残酷な運命の苦しみも、心のなかの愛の炎は決して消せはしない。 | |
第6場 | |
(二人が手を取り合って歌っているところへ、国王が入り、 アリオダンテと娘の手をとる) |
|
Recitativo | 国王 |
愛する者たちの心に平安あれ。 | |
ジネーブラ | |
お父様。 | |
アリオダンテ | |
陛下。 | |
国王 | |
畏まることはない!余もこの幸福の輪のなかに入れてくれ。 何故なら、余の人生も、そして心も、(ジネーブラに)お前はその一部であり、 (アリオダンテに)同じくそなたもそうだからだ。 |
|
アリオダンテ | |
(跪いて)御前に平伏いたします… | |
国王 | |
立つのだ、親愛なるアリオダンテよ。余は老いてなお、娘のことや王国のことを心配せねばならぬが、 その立派さゆえ、こと花婿についてだけは、その必要もなさそうだ。 |
|
ジネーブラ | |
うれしいお言葉よ、神様、感謝します! | |
アリオダンテ | |
なんという幸せだろう…… | |
ジネーブラ | |
この心が不運を耐え忍ぶことができたとしたら… | |
アリオダンテ | |
この心が不滅だとするならば… | |
二人で | |
…愛の奇跡によるものだ。 | |
国王 | |
さあ、娘よ、来るべきお前の婚礼の準備をしよう。 満ち足りた心と、美しい容貌と、宝石の髪飾りを以って。 |
|
Aria | ジネーブラ |
ここへ飛び来たれ、愛の天使よ、 | |
愛する二人の心の大いなる喜びを祝福するために! | |
言葉にすらならぬ歓喜、 | |
いかに、いかほどの喜びであることか。 | |
(退場) | |
第7場 | |
(アリオダンテ、国王、オドアルドと衛兵たち) | |
Recitativo | 国王 |
直ちにとりかかれ、オドアルド、婚礼の準備だ。 この佳き華燭の典で、この日を幸せと喜びで飾ろう。 |
|
オドアルド | |
そしてこの宮廷、王国、世界を喜びで満たしましょう。 | |
(オドアルド退場する) | |
国王 | |
さて、親愛なるアリオダンテよ、ジネーブラと同じく、 国宝である余の手より、この贈りものを喜んで受け取って欲しい。 最高の贈りものだ、わが娘と、この玉座とを。 |
|
Aria | 国王 |
名声はトランペットの音色とともに飛翔する、 | |
この世界じゅうを、われらの歓喜を告げるために! | |
喜ばしき天国に運命の歌声は響く、 | |
このうえなき幸せの日が来たと。 | |
(退場) | |
第8場 | |
(アリオダンテ一人で) | |
Recitativo | アリオダンテ |
ああ、幸せの絶頂にいる!多くの苦しみの後に、こうして今、至福の世界にたどり着けたんだ。 | |
Aria | アリオダンテ |
とわに変わらざる翼に乗り、愛は駆け上がる、 | |
真実と希望、そして勝利をその胸に抱きながら。 | |
もう恐れることはない、運命の茨の道を。 | |
この素晴らしき宝と、共にあれば常に喜びと隣り合わせなのだから。 | |
(退場) | |
第9場 | |
(語らうポリネッソとダリンダ) | |
Recitativo | ポリネッソ |
私はあなたの素晴らしさをよく知っていますよ、ダリンダ嬢、 あなたの助けを得て、今の不当な支配を挫き、恥辱に対して嘲笑を以って報い、 ジネーブラとその結婚に、王国に戦いを挑んでやろうと思っているのです。 |
|
ダリンダ | |
〔独白:これは何?ああ、胸が高鳴ってくるけれど!〕 あなた様のご命令に従いますわ、愛しいお方… |
|
ポリネッソ | |
今夜、ジネーブラが寝静まった頃を見計らい、あの女の身なりをして、身のこなしを真似て、 髪型も同くし… |
|
ダリンダ | |
それで? | |
ポリネッソ | |
王宮の庭の秘密の入り口から、私をあの女の部屋へと招き入れるのです。 そう、ジネーブラに成りすまして。 |
|
ダリンダ | |
私は何を言われるかしら? | |
ポリネッソ | |
尊敬とは高貴な女性にこそ似つかわしいものです。まだ決心がつきませんか? | |
ダリンダ | |
愛の力に賭けますわ!愛を信じる者は、何も拒む必要などないのですもの。 | |
ポリネッソ | |
私の心はすべてあなたのものです。 | |
Aria | ポリネッソ |
いま私は望んでいる、愛すべき瞳よ、 | |
そう、そうだとも、あなたが、 | |
傷ついた私の心を癒してくれるのを。 | |
私はあなたに捧げよう、この私の心のままを。 | |
あなたの瞳に映ったこの私を! | |
(退場) | |
第10場 | |
(ダリンダとルルカーニオ) | |
Recitativo | ルルカーニオ |
ダリンダ、太陽は西に沈んでしまったけれど、 君の愛らしい瞳のなかに、より明るい太陽が輝くのが僕には見える。 |
|
ダリンダ | |
あなたのその言葉はうれしいけれど。 | |
ルルカーニオ | |
君だけが僕の希望なんだ。 | |
ダリンダ | |
でも、私はあなたのものにはなれません… | |
ルルカーニオ | |
君こそ僕の理想なのに… | |
ダリンダ | |
どうか望みを捨てて。 | |
Aria | ルルカーニオ |
君は隠そうとするのだね、その瞳の輝きを。 | |
それは僕の太陽なのに、ああ、どうして? | |
君は僕を燃え上がらせ、焼き尽くす、 | |
死んでしまうほどに。 | |
どうか僕の心に命を与えておくれ。 | |
(退場) | |
第11場 | |
(ダリンダ一人で) | |
Recitativo | ダリンダ |
ああ、この胸は別の方のために燃えている、そして燃え続けるわ、ずっと。 | |
Aria | ダリンダ |
この炎は私の大切ないのち。 | |
心はその火を絶やすことはないの。 | |
誠実を以って邪心なく、 | |
この心はあの方にどこまでも従うわ。 | |
(退場) | |
第12場 | |
(幸福の谷で。アリオダンテがその場の美しさを称える) | |
Recitativo | アリオダンテ |
眼に映るすべてが幸せに満ち輝いている。 | |
第13場 | |
(ジネーブラとアリオダンテ) | |
Recitativo | ジネーブラ |
何という幸運の星が私をあなた様のもとへと導いてくれたのでしょう? | |
アリオダンテ | |
君こそがその星だとも。 | |
ジネーブラ | |
もう何も心配はありませんわ、そうです、私達は目指す港へと至りついたのですもの。 明日は私達の結婚式、素晴らしい日になりましょう。 |
|
アリオダンテ | |
幸いなるこの国の人々よ、愛らしき妖精と羊飼いの女たち、さあ、ここに来て歌い、踊り、 私たちの喜びを祝っておくれ。 |
|
Sinfonia | |
Duo | ジネーブラとアリオダンテ |
うるわしき喜びと希望がこの胸によみがえる。 | |
それは真実の愛のみわざ。 | |
本当の愛を知らぬ者は、 | |
まことの歓喜と善を見ることは出来ない。 | |
Coro | 愛のなかに遊ぶ者たちよ、 |
慕い、まことなるその心があれば、 | |
喜びの天国が与えられよう。 | |
Tutti | さあ、範としようではないか、そのまことと希望を。 |
幸福のうちに喜びを得るために。 | |
Ritournello | Ballo di Ninfe, Pastori e Pastorelle, Musette(Lentement) - Musette(Andante) - Allegro |
第2幕 | |
Sinfonia | |
第1場 | |
(月明かりの夜、古い廃墟のある場所で。中央には王宮に通じる秘密の入り口。それはジネーブラの部屋に通じる。 そこにポリネッソが一人で登場する) |
|
Recitativo | ポリネッソ |
何と好都合なことだ、ダリンダをこの計画に利用できるとはな! おや、来たぞ、アリオダンテ、こっちへ来い、そうだ、この場所に来るんだ、 ここはわが大いなる計画が成就するカンピドーリオの丘だ。 |
|
第2場 | |
(アリオダンテ、ポリネッソ、脇のほうにルルカーニオがひかえる。 そこへジネーブラに変装したダリンダがやって来る) |
|
Recitativo | ポリネッソ |
友よ、なぜこんなところに? | |
アリオダンテ | |
嬉しさのあまり眠ろうにも瞳を閉じることが出来ないのさ。ジネーブラへの思いが溢れて… | |
ポリネッソ | |
さて、どういうことだい? | |
アリオダンテ | |
僕の花嫁になるのさ… | |
ポリネッソ | |
夢でもみているんだな。 | |
アリオダンテ | |
心は喜びにふるえているよ。 | |
ポリネッソ | |
アリオダンテ、冗談だろう。 | |
アリオダンテ | |
本当だとも、少し前に誓ってくれたんだ。 | |
ポリネッソ | |
そうか、つまり彼女は僕にも愛のおすそ分けをしてくれたということだな。 | |
アリオダンテ | |
(剣に手をかけながら) 公爵!何を言い出す?でたらめを言うと、この剣が黙っていないぞ。 |
|
ポリネッソ | |
まあ落ち着けよ、もしその眼で確かめたいなら、僕が見せてやるさ。 | |
(ルルカーニオが入ってきて、廃墟の陰に身をひそめる) | |
ルルカーニオ | |
〔独白:公爵が兄上と一緒に?隠れて様子を伺っていよう〕 | |
ポリネッソ | |
ここで隠れてみているがいい。 | |
アリオダンテ | |
君が嘘をついていようが本当のことを言っていようが、 今夜は君にとって、さもなければ僕にとって、最期の時になるだろう。 |
|
Aria | アリオダンテ |
死の道行きの準備をするがいい、 | |
もし君が嘘をついているならば。 | |
けれども愛する人が私を欺いたのなら、 | |
絶望のうちに死んでしまおう。 | |
(アリオダンテは廃墟の陰に身を隠す。ポリネッソがドアを叩くと、ジネーブラに変装したダリンダが扉を開ける) | |
Recitativo | ポリネッソ |
ジネーブラだね? | |
ダリンダ | |
愛しておりますわ!(ポリネッソが中に入ると扉が閉まる) | |
ルルカーニオ | |
〔独白:恥知らずな!〕 | |
アリオダンテ | |
わが瞳よ、お前はいったい何を見ている?(毅然として扉に駆け寄る) この恥ずべき扉の向こうに彼女がいる……悲しみの極みだ、死んでしまおう。 |
|
(剣の鞘を抜き、柄を地面に立てて自分の身を突き刺そうとしたところへ、ルルカーニオが止めに入る。 そして剣をその手から奪い取る) |
|
ルルカーニオ | |
おやめください、兄上、どうしてそんな馬鹿な真似を? | |
Aria | ルルカーニオ |
生きて下さい、こんなにもひどい愛の裏切りと、 | |
名誉に対する侮辱を罰するために。 | |
そうです心の中で、さもしい浮気女のコルセットの鋼を、 | |
捻ってやるのです。 | |
(剣を奪い取る) | |
Recitativo | アリオダンテ |
こんな生き恥をさらすのか?剣も失って。私はどうすればいいのか? わが悲しみよ、何とか言ってくれ。 |
|
Aria | アリオダンテ |
不実の女よ、お前は情夫の胸の上で、 | |
遊び戯れていることだろう。 | |
裏切られたこの私は、死神の腕の中に抱かれよう。 | |
そうだ、お前の罪の上を踏みしだいて。 | |
そして悲しみの影と赤裸なこの心で、 | |
私はお前のもたらした苦痛に報いてやろう。 | |
この汚らわしい契りを断ち切るために。 | |
(退場する) | |
第4場 | |
(ポリネッソとジネーブラに扮したダリンダ) | |
Recitativo | ポリネッソ |
(あたりを気にしながら) 〔独白:矢は的を得た。あの男は絶望に瀕している、わくわくしてきたぞ!〕 |
|
ダリンダ | |
もう行きますわ、あなた。夜が明けてしまったから。 | |
ポリネッソ | |
その姿を悔やむのではなくて、君は優しい愛の言葉を聞き、恋する者の思いを知ったんだ。 | |
Aria | ダリンダ |
あなたのお顔が私の心を悦びで包んで下さるなら、 | |
そうよあなた、蔑んでも、愛してくれなくても、 | |
あなたのものであるこの私は、 | |
いつでもお心のなかにおりますわ。 | |
(退場) | |
第5場 | |
(ポリネッソ一人で) | |
Recitativo | ポリネッソ |
まんまと罠にかかったな、これで敵もついにおしまいだ。 | |
Aria | ポリネッソ |
こんな策略がまかり通るのだぜ、 | |
美徳なんてつまらぬ代物さ。 | |
許されたものだけで満足する奴は、 | |
永遠に下積みの不運を生きるがいい。 | |
(退場) | |
第6場 | |
(回廊にて。衛兵と参事官を伴った国王がいる。そこへオドアルドがやって来る) | |
Recitativo | 国王 |
諸君、さあ、議場へと赴き、王子アリオダンテが余の後継者となることを宣言しよう。 | |
オドアルド | |
たいへんです、陛下、王国の一大事です! | |
国王 | |
オドアルド、どうした?話せ… | |
オドアルド | |
悲しみと、涙を以って申し上げます。 | |
国王 | |
おお神よ!支えたまえ! | |
オドアルド | |
アリオダンテ様が… | |
国王 | |
どうしたのだ? | |
オドアルド | |
陛下、殿下が亡くなられたのです。 | |
国王 | |
何だと?余の耳は確かか?おお、何ということだ! | |
オドアルド | |
殿下の従者が王宮に報せにまいりました。海岸近くで自ら身を投げ、波に呑まれてしまわれたと。 | |
国王 | |
その従者から死の理由を聞こう。 可哀想な娘よ、私も同じ気持ちだ!おお、呪わしい運命め! |
|
Aria | 国王 |
妬み深く欲張りな運命の女神よ、 | |
おお、今日お前は、王子とともに余の心も盗み取っていった。 | |
そして神よ、悲しみは私から、最愛の娘すら奪おうというのか、 | |
余の心の分身である娘を。 | |
(退場) | |
(Versioni alternative) | |
Aria | 国王 |
満ち足りた世界、王道楽土は、 | |
沈み行く太陽を見つめることはない。 | |
苦しみと不幸は、 | |
夜明けにまみえることもない。 | |
第7場 | |
(ジネーブラ、ダリンダ、国王) | |
Aria | ジネーブラ |
胸さわぎがするわ、何故だかわからないけれど。 | |
喜び?それとも悲しみなの? | |
誰か教えて?どうしてなのか? | |
Recitativo | ダリンダ |
お幸せに、王女様。 | |
国王 | |
娘よ、王たる者の心は、不当な運命の邪悪な痛手に抗うときこそ、強くあらねばならぬ。 | |
ジネーブラ | |
この不吉な前置きは何? | |
国王 | |
ああ!運命は残酷だ! | |
ジネーブラ | |
ねえ!お父様、言って頂戴… | |
国王 | |
私の支えが、…王国の希望が… | |
ジネーブラ | |
ああ! | |
国王 | |
お前の花婿、アリオダンテが海岸近くで海に呑まれた。 | |
ダリンダ | |
何ですって! | |
ジネーブラ | |
そんなばかな! | |
国王 | |
狂気が彼の命を奪ったのだ。 | |
ジネーブラ | |
ああ!お父様。 | |
国王 | |
彼は死んだ。 | |
ジネーブラ | |
ああ!(椅子に崩れ落ちる)堪えられないわ、私も死んでしまう。 | |
ダリンダ | |
王女様? | |
国王 | |
しっかりしろ、娘よ、他のことを考えるんだ! | |
ダリンダ | |
ああ!なんてお気の毒な! | |
国王 | |
おお!どうしてこんなことに、娘よ? | |
ジネーブラ | |
私も死にます。 | |
国王 | |
近くのベッドへ運べ、従者よ。私もすぐに行く。ああ、なんという日だ! | |
(ジネーブラはダリンダと下女に介抱される。国王が出て行こうとするところで、 オドアルドとルルカーニオに出会う) |
|
第8場 | |
(国王、オドアルド、ルルカーニオ) | |
Recitativo | ルルカーニオ |
国王陛下。 | |
国王 | |
ルルカーニオ、しっかりするのだ!お前の兄が死んだなら、余を父と思うが良いぞ。 | |
ルルカーニオ | |
陛下!私は裁きを求める者です、慰めはいりません。 | |
国王 | |
裁きだと?誰に対してだ。 | |
ルルカーニオ | |
私の愛する兄を殺した罪人です。 | |
国王 | |
どういうことだ?彼は狂気に駆られて… | |
ルルカーニオ | |
いいえ、陛下、張本人がいるのです。 | |
国王 | |
それは誰だ? | |
ルルカーニオ | |
恥知らずの女です。 | |
国王 | |
聞き捨てならぬな!で、その恥知らずの女とは誰だ? | |
ルルカーニオ | |
陛下の娘です。 | |
国王 | |
なんだと、理解できぬ! | |
ルルカーニオ | |
これをお読みください。(手紙を渡す) | |
国王 | |
(読む)[王宮の庭の秘密の扉に、昨夜、ジネーブラは本命の恋人を招き入れました… (低い声で読み続ける) これ以上は申しません。アリオダンテはそれを目撃し、私も見たのです。離れて様子を伺っていると、 絶望した兄は自ら剣で自害しようとしました。 私は彼の剣を取り上げましたが、運命を避けることは出来ませんでした。遅かったのです。 (もう一度、はっきりと読み返す) 神様!あなたは絶望に瀕する男を押し留めることがお出来にならなかった。 父上にして国王陛下、あとはおわかりでしょう。罪深き女を罰せねばなりません。] (ゆっくりと椅子に崩れる) |
|
ルルカーニオ | |
これが真実です。もし誰かが彼女の庇護者として名乗りを上げるならば、 私は自らの剣を以って告発者としての任を果たしましょう。 |
|
Aria | ルルカーニオ |
王室の誇りと尊厳とが、 | |
陛下に闘いを挑んでいるのです。 | |
あなたの娘ゆえに、 | |
正義の女神アストライアのために。 | |
罪ある娘への罰を、地と天にお示しください。 | |
父親としてではなく、そうです、国王として。 | |
(退場) | |
第9場 | |
(国王、オドアルド、ジネーブラとダリンダ) | |
Recitativo | オドアルド |
いったい幾つの不運が重なるのか! | |
ダリンダ | |
陛下、ご覧下さい、王女様の悲しみにやつれ果てた様を。 身なりやお顔だけでなく、ご自身そのものを損なっておられます。 |
|
国王 | |
恥知らずの不倫女など、余の娘とは思わぬ! (侮蔑とともに立ち上がり、去る) |
|
第10場 | |
(ジネーブラとダリンダ) | |
Recitativo | ジネーブラ |
不倫女ですって? | |
ダリンダ | |
〔独白:ああ、どうすればいいのか!〕 | |
ジネーブラ | |
私が?不倫女?どうして? | |
ダリンダ | |
可哀想に! | |
ジネーブラ | |
どうして?私が不倫女だなんて? | |
ダリンダ | |
ああ、堪えられない! | |
ジネーブラ | |
あなたは誰?彼は誰?私は誰なの? | |
ダリンダ | |
〔独白:ああ、錯乱しているわ!〕 | |
ジネーブラ | |
来るがいい、黄泉の国より、怨霊どもめ、何をぐずついているの? 全世界の愛を奈落の底に葬り去るがいいわ。 |
|
ダリンダ | |
王女様? | |
ジネーブラ | |
あいつは誰?何を言う気? | |
ダリンダ | |
お気を確かに、しっかりして下さい! | |
ジネーブラ | |
私の愛するお方が死んでしまった、私にとって大切なものなどもうないわ。(泣く) | |
ダリンダ | |
お心のままにお話ください。 | |
ジネーブラ | |
ダリンダ、私は不倫女などではないわね?お父様はそんなことを言い立てる方ではないわね? でもどうして? |
|
ダリンダ | |
わかりませんわ。 | |
ジネーブラ | |
私には分かっている、この苦しみの理由が。 | |
ダリンダ | |
気をしっかりなさって! | |
ジネーブラ | |
私がいるのは何処なの?生きているの?自分がわからなくなってしまったのかしら? | |
Aria | ジネーブラ |
この残酷な苦しみの極みに、 | |
死神よ、何処にいる? | |
私はまだ死んでいないのよ。 | |
来て頂戴、不吉な私にあなたは救い。 | |
私の慰めそのものなのに。 | |
Ballo | Entrée de Songes agréables - ntrée de Songes funestes - Entrée de Songes agréables - effrayés |
- Combat des songes funestes et agréables. | |
Recitativo | ジネーブラ |
私は何を見ているのかしら?神様!惨めだわ!この苦しみは眠りのなかまでつきまとってくる。 | |
第3幕 | |
Sinfonia | |
第1場 | |
(アリオダンテとダリンダ。ダリンダが二人の男に追われ逃げてくる。 みすぼらしい身なりのアリオダンテが、男達と戦い、追いやる) |
|
Arioso | アリオダンテ |
神よ、これが慈悲と言えようか? | |
千の死を味わうために生きながらえるとは。 | |
(退場) | |
Recitativo | ダリンダ |
(舞台に現れる) ひどいわ!裏切ったのね!ああ、悪魔のような公爵だわ! |
|
アリオダンテ | |
(暴漢たちを舞台袖まで追いやって) 卑怯者ども、戻って来い。 |
|
ダリンダ | |
まあ、どうして!アリオダンテ様? | |
アリオダンテ | |
ダリンダじゃないか?本当か。 | |
ダリンダ | |
ええ。王子様こそ、生きていらしたなんて信じられない。 | |
アリオダンテ | |
まんまと生きながらえてしまった、ジネーブラに裏切られたのに。 | |
ダリンダ | |
ジネーブラがあなたの誇りを傷つけたと信じ込んでいらっしゃるのね。? | |
アリオダンテ | |
この眼で見たものは疑いようがない。 | |
ダリンダ | |
あなた様はアルバニー公に騙されておいでなのです。 あの計算高く狡賢い男は、私の人生と王国を罠にかけました。 |
|
アリオダンテ | |
何だって?じゃあ、私の愛に背いた者のように見えていたのは、ジネーブラではないのか? | |
ダリンダ | |
そうです、あれはこの私。 | |
アリオダンテ | |
自分としたことが! | |
ダリンダ | |
お聞きください、殿下、私は心から愛していたのに… | |
アリオダンテ | |
私について来るんだ、話は行きながら聞こう。 | |
Aria | アリオダンテ |
漆黒の闇、偽りの姿、 | |
悲劇の装束、狂気の魂、 | |
お前たちは偉大なる真実を裏切った。 | |
邪悪な疑念と偽りの瞳、 | |
見せかけの友情と、そして裏切、 | |
お前たちは私からすべての幸せを奪ってしまった。 | |
(退場) | |
第2場 | |
(ダリンダ一人で) | |
Recitativo | ダリンダ |
卑怯なポリネッソ!罪に手を染までしたのに、その愛の報いが死だというの? そうよ、私が愚かだった。あなたを愛しすぎたばかりに。 |
|
Aria | ダリンダ |
怠惰な天空よ、何をぐずぐずしている? | |
早くあの卑劣な男の頭上にいかづちを落として! | |
あの背徳漢を八つ裂きにして頂戴。 | |
私を裏切った憎いあの男を。 | |
もしこの不正義が罰せられないなら、 | |
大聖堂が岩のように崩れるのを見て笑ってやってもいい。 | |
第3場 | |
(王宮の庭園で。国王、オドアルド、そしてポリネッソ) | |
Recitativo | オドアルド |
陛下、王女様が哀願しておられます、死の前に、どうかその御手への口づけを許されるようにと。 | |
国王 | |
いや、そうはいかぬ。娘の庇護者となる騎士が現れぬ限り、娘は余の顔を見ることは許されないのだ。 | |
ポリネッソ | |
陛下、決闘の用意は出来ております。私がジネーブラの庇護者となりましょう。 | |
Aria | ポリネッソ |
義務、正義、そして愛。 | |
それらが輝き燃えて、わが心を栄光へと差し向ける。 | |
もし天の星がこの憧れに微笑んでくれるなら、 | |
そうだ、われらは勝利するだろう。 | |
(退場) | |
第4場 | |
(国王とオドアルド) | |
Recitativo | 国王 |
娘を余のもとに呼んでくれ。(オドアルド立ち去る) わが心よ、お前は大げさなまでに熱をこめて、厳格な審判者たる国王の役割を果たしてきた。 けれども今は、娘を愛する父親の心を取り戻すのだ。 |
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第5場 | |
(国王、衛兵に伴われたジネーブラ) | |
Recitativo | 国王 |
これが余の娘なのか、おお、嘆かわしいことだ! | |
ジネーブラ | |
お父様、ああ、この言葉は甘い響きがいたします!私は御前に跪づきましょう。許しを乞おうとは思いません、 だって、私は無実なのですから。けれど… |
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国王 | |
〔独白:ああ!〕娘よ、何を求めるというのか? | |
ジネーブラ | |
私はお父様に憎しみを残させて死にたくはないのです。何故なら私は、潔白のうちに死んでいくのですから。 (跪づく) どうか、その御手へのくちづけをお許しください。私の死刑執行令状にご署名なさる、その御手に。 それだけで、私は満足です。 |
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国王 | |
さあ、私の手はここだ。〔独白:ああ、娘よ!おお、神よ!〕(手を差し出す) | |
Aria | ジネーブラ |
くちづけましょう、その貴い御手に、 | |
厳格ではあっても、その甘い御手に。 | |
不条理ではあっても、あなたは一番大切なお方。 | |
恐ろしいけれども、大好きなお父様。 | |
Recitativo | 国王 |
娘よ、奇怪な運命に弄ばれ、生と死のはざまに揺れてはいるが、 もしお前が潔白なら、希望はある。 お前の名誉のために闘う者が勝利すれば。 |
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ジネーブラ | |
それは誰ですの? | |
国王 | |
ポリネッソだ。 | |
ジネーブラ | |
そのような庇護者などお断りです! | |
国王 | |
いや、私が望むのだ、お前の名誉のため、私の名誉のため、そして王国の名誉のために。 | |
Aria | 国王 |
お前をこの腕で抱きしめ、そして別れよう、 | |
だが私の心は、この脚とは裏腹に、 | |
いつまでもお前のもとに留まろうとする。 | |
わが娘よ、さらばだ! | |
お前を残してゆかねばならぬとは、おお神よ! | |
再び会えるかもわからない、わが心の支えよ。 | |
(退場) | |
第6場 | |
(ジネーブラと衛兵たち) | |
Recitativo | ジネーブラ |
お父様は行ってしまうのね?わが心よ、強くあれ! 死ぬなんてちっぽけなことだわ。 |
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ジネーブラ | |
そう、私は死んでゆく。ああ!神様! | |
誇りを胸に。ともに死んでくださいますか? | |
天国の神様、この名誉にどうか憐れみをおかけください。 | |
Sinfonia | 第7場 |
(決闘の場。王座に着く国王、周囲に護衛兵たち。 オドアルド、武器を携えたルルカーニオ。そこへ、やはり武器を手にしたポリネッソが登場する。 野次馬の群集たち) |
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Recitativo | ルルカーニオ |
公正なる大儀にこそ栄えあれ。ジネーブラの庇護者を地に沈めてみせよう。 彼女を護るとはそういうことだ。 |
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ポリネッソ | |
彼女の庇護者はここにいるぞ、剣を携えてな。ジネーブラ側の告発者を倒すために。 | |
(闘う) | |
オドアルド | |
神よ、罪ありし者を罰したまえ! | |
ルルカーニオ | |
この一撃は、わが兄上のため。 | |
国王 | |
神よ! | |
ポリネッソ | |
やられた! | |
国王 | |
急げ、オドアルド、倒れた公爵を救けるんだ… (オドアルドが公爵を抱きかかえ、決闘場の外へ連れ出す) |
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ルルカーニオ | |
さあ、他に罪ある女の庇護者に名乗り出る者はいるか、来るがいい、待つぞ… | |
国王 | |
(王座より立ち上がり、決闘場へと入ってゆく) 他にいないというなら、余が自らの名誉を守ろう! |
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第8場 | |
(国王、ルルカーニオ、兜の面を下げて顔を隠したアリオダンテ、そして衛兵たち) | |
Recitativo | アリオダンテ |
お待ちください、陛下、無実の女を庇護する者が、ここにおります。 | |
国王 | |
おお、まことか? | |
アリオダンテ | |
私がジネーブラをお護りします。 | |
ルルカーニオ | |
いいだろう、剣を取れ! | |
アリオダンテ | |
ルルカーニオ、私は罪なき者を殺めることは出来ぬ。(顔を見せる) | |
ルルカーニオ | |
なんということだ? | |
国王 | |
わが瞳よ、何を見ている?おお、信じられぬ! | |
ルルカーニオ | |
まさか!兄上では! | |
国王 | |
アリオダンテ、どうして? | |
ルルカーニオ | |
生きていたのか? | |
国王 | |
亡霊ではあるまいな? | |
アリオダンテ | |
運命が告げたのです、私を見舞った災難と、私の愛する人の無実と、そして… | |
ルルカーニオ | |
誰から?どのように? | |
アリオダンテ | |
兄弟よ、ダリンダの無垢の罪を許すと約束してくれ… | |
第9場 | |
(そこへダリンダとオドアルドが登場する) | |
Recitativo | 国王 |
ダリンダだと、何処にいるのだ? | |
ダリンダ | |
ここに。おん前におります。(跪づく)陛下、私はポリネッソと共謀したのです、けれど今は… | |
オドアルド | |
陛下、ポリネッソが息を引き取る前に全てを白状しました。 | |
ダリンダ | |
私はまだ… | |
国王 | |
立つのだ、全てを忘れ、全てを許そう。それで終わりだ! 娘のところへ急ごう、アリオダンテ、ついてくるのだ。 もうすぐ、わが王宮と王国の涙は喜びのそれへと変わるだろう。 そうだ、悲しみにやつれた顔が笑顔へと。 |
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(退場) | |
Aria | アリオダンテ |
暗く痛ましい闇夜の後に、 | |
明るい太陽は大空に輝きわたる。 | |
地上を喜びで満たしながら。 | |
この舟は恐ろしい嵐に呑まれたけれども、 | |
港を目指すのだ、岸辺を見失わずに。 | |
(退場) | |
第10場 | |
(ルルカーニオとダリンダ) | |
Recitativo | ルルカーニオ |
ダリンダ!わかってほしい、僕の愛の火が、兄上のそれと同じく再び燃え上がっていることを。 | |
ダリンダ | |
ああ、あなた!申し訳ないわ、けれどそれにお応えするには、 私はまず、裏切りと潔白の事実をお伝えしたいの。 |
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Duo | ルルカーニオとダリンダ |
ルルカーニオ | |
希望を語っておくれ、それで十分さ。愛らしいその甘い唇で。 | |
ダリンダ | |
そうね、後悔しているわ、そして新しい炎がこの胸で燃え始めている。 | |
ルルカーニオ | |
まだ愛しているというのか?おお何と、僕が聴いているその言葉は!まだ君は… | |
ダリンダ | |
卑劣な人だったわ! | |
ルルカーニオ | |
まだ愛している?あの男を。 | |
ダリンダ | |
あんなまねをしたことを悔やんでいる。ずっと悪い夢をみていたよう。 | |
ルルカーニオ | |
さあ、未来だけを考えよう… | |
(退場) | |
第11場 | |
(ジネーブラの牢獄として用意されている部屋で) | |
Recitativo | ジネーブラ |
不条理な運命にどれだけ翻弄されなければならないのかしら、生きるとも知れず死ぬとも知れず、 不安に一人打ち捨てられて? 私に救いはある?神様、平穏な時は戻ってくるのですか? |
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Arioso | ジネーブラ |
この悲しみは私に最期の時を連れて来る、 | |
確かであるはずの操は見くびられ、ああ、神様! | |
死以外に希望とて持てない… | |
Sinfonia | |
第12場 | |
(喜ばしい音色とともに、国王、アリオダンテ、ダリンダ、ルルカーニオとオドアルドが到着する) | |
Recitativo | ジネーブラ |
これは夢?それとも現実?私は何をしているのかしら? まだ生きているの?それとも気がおかしくなった?でも何故?神様! |
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国王 | |
もう大丈夫だ、娘よ、すぐにわかるだろう。 さあ、お前の夫となる者を抱くが良い、そして悲しみを忘れるのだ。 (ジネーブラとアリオダンテが互いに抱き合う) |
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ルルカーニオ | |
ダリンダ、どうか僕の愛を受け止めてほしい。 | |
ダリンダ | |
あなたの愛に比べたら、私の誠意なんてちっぽけなものですわ。 | |
国王 | |
さあ、舞踏と祝宴の準備だ。管弦楽団を召せ。わが王宮と王国の歓喜を国民全てと分かつとしよう。 | |
(ジネーブラとアリオダンテ以外の者が退場する) | |
アリオダンテ | |
千回生まれ変わろうとも、私は自らの人生を全てあなたに捧げよう。 | |
ジネーブラ | |
千の命を得たとしても、全てあなたにお捧げしますわ。 | |
アリオダンテとジネーブラ | |
あなたに捧げるこの愛は、幾千あろうと足りることはない。愛と、誠、そして真実と。 | |
(退場する) | |
最終場 | |
(王宮の広間にて。その端には、円柱で装飾された階段がある。その両側の下方には荘厳な扉、 上方には管弦楽団のための桟敷がある。 国王とジネーブラ、アリオダンテはともに手を繋ぎ、ダリンダとルルカーニオも同様に手を携えている。 オドアルドの姿も見える。 国王の付き人である騎士や淑女たちが仰々しく階段を降りてくると、 ほぼ同時に、衛兵と民衆が二つの扉から入ってくる。 国王が階段を歩み始めると合唱が始まり、騎士と淑女達が踊りに興じる。 |
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Coro | 全員で |
善なる高潔さを歓呼して迎えよ、 | |
それは常なる喜ばしき勝利。 | |
Ballo | (Alla gavotta - Rondeau - Andante Allegro) |
Coro | 全員で |
徳は勝利し、われらの心を満たす。 | |
無垢の美とともに運命の女神の心をも奪い、 | |
彼女のたくらみを打ち払うだろう。 | |
歓喜よ来たれ、そして魂に平和あれ。 | |
終わり | |
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